研究課題/領域番号 |
21K14795
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
岸本 真治 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (40814330)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アズラクトン / NRPS / CTドメイン |
研究実績の概要 |
前年度においてフミマイシンとレントフラニンがAlterクラスター中の遺伝子とそれと全く異なる遺伝子領域に存在する遺伝子AlsidEとの働きで生合成されていることを明らかにしていた。本年度においてはこれらの詳細な形成機構の解明を行った。 大腸菌を用いて調製したAlSidEに基質を加えた酵素反応溶液にAlterクラスター産物を模したメトキシヒドロキノンを添加するとフミマイシン様の化合物が生成する。このフミマイシン様の化合物生成に直接AlSidEが関与するのかを確かめるために、AlSidEの酵素反応溶液から限外濾過で酵素のみを除きメトキシヒドロキノンを添加したところ、同様にフミマイシン様化合物の生成が確認された。このことからAlSidEは反応性の高い化合物を生成していることが判明した。一方、AlSidEは非リボソームペプチド合成酵素(NRPS)と総称される酵素の一種で、複数のドメインから形成されている。このドメイン構造を解析すると末端が分子内環化を担うCTドメインであったことから、AlSidEの真の産物はアズラクトンと呼ばれる構造を有するフマリルアズラクトンと予想した。アズラクトンは加水分解を容易に受けてしまう構造であるためこれまでに天然から見出されたことはない。そこでAlSidEの酵素反応溶液を反応後速やかにLC-MSで分析したところ、別途化学合成したフマリルアズラクトンと一致する化合物ピークを見出すことができた。また、フミマイシンやレントフラニンの生産菌であるAspergillus lentulusの培養液や、AlsidEのホモログ遺伝子を有する他の糸状菌の培養液から同様にフマリルアズラクトンを検出することができた。 アズラクトンを有する化合物の天然からの検出例はこれまでになく、微生物の二次代謝の常識を覆す発見を世界に先駆けて成し遂げることができたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
フミマイシンとレントフラニンの生成の鍵となっているフマリルアズラクトンを発見することができた。また、Alterクラスター中の遺伝子AlterBを大腸菌で発現させて得られた酵素AlTerBをAlSidEとともに用いることでフミマイシンとレントフラニンの水和体を生成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
フミマイシンとレントフラニンの生合成において残る不明点は脱水酵素である。これまでに判明した遺伝子をすべて利用してもフミマイシンとレントフラニンの水和体しか得られていないが、Alterクラスター中の遺伝子やAlsidE周辺の遺伝子を生産菌からノックアウトしても水和体は得られていない。また、ノックアウト株に生合成中間体を添加しても水和体はほとんど見られない。このことから生産菌内では何らかの未知の脱水酵素が働いていると予想される。これを発見するための方法として現在、タンパク質間相互作用に着目した手法の開発を行っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度において使用するべき事項に適切に使用して本申請研究の達成に努める予定である。
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