皮膚は生体組織で最大の臓器であり、私たちを外部環境から守る生理的・物理的シールドとして常に機能を発揮している。「皮膚の酸化」は、皮膚の異常・老化(シミ、シワ、たるみ等)や乾癬、アトピー性皮膚炎、皮膚がんといった皮膚疾患に大きな影響を与え、QOLを著しく低下させることから、皮膚酸化の全容解明は、学術界・社会から強く要請されている。特に、皮脂を含む表皮は、外部環境からの種々の刺激(紫外線や化学物質、アレルギー抗原、細菌・ウイルス、等)に対するバリア機能を示すことから、酸化による影響が注目されている。応募者はこれまでに、生体や食品中の酸化修飾のメカニズム解明、および抗酸化物質によるその予防法の構築に重点を置いて研究を進めてきた。この基盤技術をもとに、皮膚脂質の酸化修飾を多角的な視点で捉え、いまだ明らかでない、皮膚脂質の酸化が皮膚状態・疾患に与える影響の解明につながり、食品機能成分を活用した酸化制御により、皮膚の異常や老化、疾患の予防・改善方法の構築を目指す。そのために2021年度は、皮膚脂質の酸化ターゲットの同定と酸化メカニズムの評価を重点的に進めた。2022年度は、酸化メカニズムのさらなる検討を進め、皮脂の酸化に重要な光酸化のさらなるメカニズム解明とその予防法を検討した。本研究は、皮膚の酸化が皮膚状態に与える影響の真の理解につながり、健全な皮膚状態の維持を実現できることから、社会的意義と波及性が極めて大きい。
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