研究課題/領域番号 |
21K14802
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小川 剛伸 京都大学, 農学研究科, 助教 (10793359)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 内部構造 / 食感 / 美味しさ / イメージング |
研究実績の概要 |
「咀嚼時に食品の構造がどのように変形・破断すると、いかなる食感と心地良さが生まれるのか?」は不明であり、現在の多くの食品製造工業では、経験に基づく試作と食感評価を繰り返すことで、食感の改良を図っている。これまでに研究代表者は、製造時の食品の構造を多量に計測できるようにすることで、人工知能を活用し、一部の食感の定量的な予測に成功した。しかし、多くの食品は複数の食感を併せ持っており、全ての食感と、さらには食感から得られる心地良さを予測するには至っていない。そこで本研究では、論理的に食感の改良を図るための基礎を確立することを目的とした。 食感は、食品の美味しさ(心地良さ)を決める重要な要因であり、咀嚼時に歯で食品を圧縮して、その際に食品から押し返される力に起因する。食品を圧縮した際の微小変形については、粘弾性等に関するレオロジーを基礎学術とした理論が構築されている。一方、咀嚼時は、破断を含む大変形が直接的に関与すると言われているが、この大変形における現象は、確率的であることが知られており、非常に複雑で極めて難解である。そのため、非常に多くの研究が精力的になされているものの、食品の咀嚼時の変形・破断機構の詳細は不明であり、製造時の食品の状態と、その食品を咀嚼した際の脳での認知の関連は十分にわかっていない。そこで、2021年度は、圧縮時の食品内部における変形・破断挙動を計測する機器の開発に取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
食感の定量化は、機器による計測法と人の感覚による官能評価法がある。テクスチュロメーターは、プランジャーで食品を圧縮した際の歪みと、プランジャーに負荷される応力を計測し、両者の関係から約8種類の食感を定義付ける。しかし、テクスチュロメーターを含む既存の機器は、食品に付加した力に対し、食品が反発する力や挙動を平均的に計測しており、食品内における局所的・非均質的な変形・破断挙動を計測できる機器は存在しない。特に、圧縮時の食品内部における局所的・非均質的な変形・破断挙動を高い空間分解能かつ時間分解能で撮影することが不可欠である。しかし、高い空間分解能(拡大率)と高い時間分解能(計測時間)は、トレードオフの関係にあり、既存の手法では達成できない。そこで、新たなアイデアのもと、このトレードオフの関係を打開することを目指した。そして、提案法における原理の検証まで完了することができた。そのため、当初の研究実施計画にもとづき、順調に研究を進展することができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、原理の検証まで完了した新たな食感計測法の開発を進め、既存法が有する難点を解決できるようにすることを目指す。また、食感とそれに基づく心地良さは、脳で認知されるが、その際の神経学的・脳機能学的な機構は、十分にわかっておらず、食感と心地良さの評価には、官能評価が不可欠である。しかし、官能評価においては、言語化過程を経るため、個人差の影響が大きくなることが課題となっている。そこで、言語化過程を経ずに、人が感じる美味しさを直接計測する手法の開発に取り組む。
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