日々の食生活から摂取可能な食品機能に対する社会的需要は高い。実際の食事において、食品素材を単独で摂取することは稀であり、多彩な組合せが生じている。とりわけ、「飲」と「食」は切り離すことができない。ほとんどの場合、茶やコーヒー、出汁などを飲みながら食品を摂取しており、飲料と食品の混在頻度は極めて高い。つまり、食生活における真の食品機能性および機能性成分を把握・活用するには、「飲」と「食」の関連性の解明が不可欠である。本研究では、「飲」と「食」の混在に起因する食品機能性および機能性成分の変化を解明し、各飲料と食品の足し合わせではない機能性および機能性成分の提示を試みた。 飲料として緑茶・コーヒー・酢・出汁など、食品としてゲニステイン・ケルセチン・スルフォラファン・βカロテンなど、様々なサンプルを用いて混在時における機能性変化を抗炎症作用に着目して検討した。LPS刺激により炎症を惹起したマクロファージ様細胞RAW264に「各飲料」、「各食品」および「各飲料と各食品の混合物」を添加後、NO産生抑制について評価したところ、混合物は各飲料および各食品の相加的な抗炎症作用を示し、混在による機能性変化は見出されなかった。今後、飲料と食品の探索範囲を拡大するとともに、加熱処理などの調理手順を加えるなど、混在に起因する機能性および機能性成分変化について更なる検討が必要である。 一方、上記検討において、出汁(昆布・鰹節・干し椎茸・煮干し)の抗炎症作用を見出した。日本の伝統的な調味料である出汁の機能性は、研究意義が高いと考え、更なる研究を行った。その結果、干し椎茸由来の出汁が特に高い抗炎症作用を示すことを見出すとともに、含有する抗炎症成分として9つの化合物を特定した。また、干し椎茸出汁および特定した化合物は、脂肪細胞3T3-L1とRAW264の共培養系においても抗炎症作用を示すことを見出した。
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