トコフェロールは4種類の同族体(α、β、γ及びδ)からなり、そのうちα-トコフェロールが最も高いビタミンE活性を示す。ダイズはα-トコフェロールの含有率が10%未満であり、他の油脂作物に比べα-Toc含有量が低く(ヒマワリ:90%、セイヨウアブラナ:30%程度)、その栄養性に影響している。ダイズ種子のα-トコフェロール含有率の向上は、ダイズの利用の拡大、市場価値および栄養価値の増加に寄与すると期待されている。 本研究では、異なるトコフェロールの組成を持つダイズ品種「K099」と「Fendou 16」の交雑に由来するF6世代の組換え自殖系統分離集団で、トコフェロール含有量と含有率に関連する計22個の有意なQTLが6本の染色体に座上することを確認した。検出した22個のQTLのうち、δ-Toc、β-Toc、γ-Tocの含有量および含有率に関連する7個のQTL が染色体14番にQTLクラスターqTClu14を形成することを確認し、qTClu14のゲノム領域にあるメチル化に関与する遺伝子Glyma.14g132800をqTClu14の候補遺伝子として推定した。qTClu14の効果を検証するため、qTClu14の準同質遺伝子系統(NIL)を作出し、NILs間にGlyma.14g132800の発現量や種子α+γ-Toc含有率の差が確認され、Glyma.14g132800がトコフェロールの生合成経路を制御する新規遺伝子であることが確認された。 本研究で同定したトコフェロール生合成経路を制御する遺伝子により、高いα-Toc含有率を持つ高機能性ダイズ育種素材の創出が期待できる。
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