研究課題/領域番号 |
21K14841
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
廣岡 義博 近畿大学, 農学部, 講師 (80780981)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | イネ / 葉面積 / ダイズ / 被覆率 / 機械学習 / ササゲ / 成長解析 / 非破壊計測 |
研究実績の概要 |
研究代表者は現在までに作物の生育動態に関する定量的評価手法の開発を行ってきたが,この手法では群落閉鎖後の生育状態に関する評価は難しく,また,広域評価も困難であった.そこで本研究では,生育期間を通して作物の生育情報を収集するための手法を開発し,さらに手法の広域展開可能性を検討することを目的として,以下の解析・実験を行った. ①生育期間を通した生育情報収集技術の開発:広範な栄養環境下で多様なイネ6品種を用いて行った3か年の栽培試験結果から,現在までに開発してきた生育動態を評価するパラメータのうち被覆率増加に関するパラメータがバイオマス生産をよく反映していることがわかった.さらに,これらのパラメータに加えて,群落閉鎖後の葉身窒素含量のような品種固有の生理パラメータを利用することで,収量の推定精度が改善されることを示唆した. ②ドローン計測による被覆率計測手法の検討:収量変動の大きい圃場でダイズの栽培試験を行い,異なる距離からのドローン撮影による被覆率計測を試みた.近距離(約7m)からのドローン計測と比較して,遠距離(約20m)からの計測による収量推定精度が高かった.遠距離からの撮影は雑草等の誤差要因を小さくすることが明らかとなり,より簡易的に広域のデータ収集が可能であることを示した. ③機械学習を利用したササゲ収量推定精度の検証:西アフリカでササゲ20品種を用いた栽培試験を行った。通常マメ科は水平葉であるため,被覆率を生産性評価に利用することは難しいが,本研究対象地域のような低生産性地域では被覆率が重要なパラメータであることがわかった.簡易的な3時期の非破壊的な被覆率計測によって,対象地域のササゲ収量を高精度で推定できることが示された.ここでは,4手法の機械学習を試し,手法による推定精度の違いを検出することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は,群落閉鎖後の作物の生育状態の評価手法を検討するとともに,ドローンを用いた評価手法の広域展開可能性を検討することが当初予定であった.群落閉鎖後の評価手法としては,葉身窒素濃度のような葉の生理パラメータを計測することが生産性の評価のために重要であることが分かった.また,被覆率が生産性評価のために重要なパラメータであることがわかったことに加えて,遠距離からのドローン計測によって生産性の評価が高精度でできることがわかり,評価手法の広域展開可能性を示すことができた.これらの当初予定に加えて,解析手法として機械学習を利用することで,汎用的な収量予測モデルを構築することができたため,当初の計画以上に進展していると判断した.また,機械学習手法による推定精度を比較することで,収量予測に適した手法を示すことができたこともこのように判断した理由である.
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今後の研究の推進方策 |
群落閉鎖後の評価手法として,葉の生理パラメータを評価する必要性が明らかとなった.そのため,熱画像カメラを用いた非破壊的な群落表面温度計測を利用した生理パラメータの算出を試みる.また,被覆率計測に加えてマルチスペクトル画像を撮影することで,さらに詳細な生産性の評価手法を検討する.ここまでの研究では,3時期の非破壊計測値と機械学習を利用した収量推定を試みたが,今後はさらに多頻度の計測値を解析することで,機械学習手法の有用性がより明確になるのではないかと考えている.また,土壌環境による推定誤差の変動が明らかになりつつあるため,栽培環境や管理方法(施肥・栽植密度)などによる推定誤差の変化などを詳細に解析していく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
新たに栽培実験を行う必要が生じたため.また,機械学習による評価手法を確立しつつあるため,専用のパソコンを購入する必要性が生じたため.
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