これまでに作物の生育動態に関する定量的評価手法の開発を行ってきたが,広域評価が困難であった.そこで本研究では,広域評価に向けた作物生育情報を収集するための技術を検討することを目的として,以下の実験・解析を行った. ①広範な栄養環境下で多様なイネ6品種を栽培した試験結果から,被覆率増加に関するパラメータがバイオマス生産をよく反映していることがわかった.さらに,これらのパラメータに加えて,群落閉鎖後の品種固有の生理パラメータを利用することで,収量の推定精度が改善されることを示唆した. ②水環境に関して圃場内変動の大きい圃場におけるダイズ栽培試験結果から,正規化植生指標(NDVI)による評価では生育中期以降の生育量推定が困難であるのに対して,Enhanced Vegetation Index(EVI)を用いることで生育中期以降の生育量を評価できる可能性が示された.また,異なる距離からのドローン撮影により被覆率を計測したところ,遠距離からの撮影は雑草等の誤差要因を小さくすることが明らかとなった. ③異なる施肥水準を設定した水田において群落構造に特徴を有するイネ2品種を栽培した.近距離マルチスペクトル計測に加えて,ドローンを利用したマルチスペクトル計測を行った.近距離,ドローン計測ともに植生指標の中では,Chlorophyll Vegetation Index(CVI)が葉面積動態評価に最も適している指標であることが示された. ④西アフリカにおいて異なる土壌環境下で栽培した20品種のササゲの被覆率,土壌肥沃度,生育期間を説明変数として機械学習による収量推定を試みた.継続的に非破壊計測した被覆率は収量予測に有効であることが明らかになった一方で,土壌肥沃度や生育期間の変数によっても予測精度は改善しなかった.また,土壌の種類や栽培品種型によっても最適モデルが異なることを明らかとした.
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