本研究では、カキの最重要形質の一つである完全甘ガキ性の決定遺伝子座の解析と制御メカニズムの解明を目指した研究を実施している。これまでに、決定遺伝子の座乗領域はカキ属近縁種ゲノムベースで約900kbに絞り込まれている。しかしながら、栽培ガキの倍数性も一因となり、決定遺伝子とその制御メカニズムは同定できていない。2022年度は以下に示す3つの点について進展があった。 1. 六倍体カキのゲノムをPacbio Hifiによりシーケンスした。ハプロタイプレベルのアセンブルを目指したが、6つのゲノムのうち5つしかアセンブルされなかった。しかし、甘渋性決定領域については、過去に作製した甘渋性連鎖マーカーをアセンブルされた配列に全て配置することができ、機能ハプロタイプを見分けることが可能となり、ゲノム上の構造変異が可視化された。 2. 前年度に見出された変異型完全甘ガキアレルに遺伝的に近いと思われる顕性の非完全甘ガキアレルの配列を詳細に解析した。遺伝資源とF1集団10個体のゲノムシーケンスを組み合わせて解析し、候補遺伝子は7遺伝子、候補多型は80個に絞られた。これらに非同義置換は含まれなかったが、1つの候補遺伝子のイントロン部に多型が集中していた。これを有力な候補遺伝子とみなし、機能解析に着手した。 3. 完全甘ガキ育種で見られる、完全甘ガキであるにも関わらず渋味を呈する個体 (渋残り) のサンプル・データ収集を進めた。これら個体の渋味は甘渋性決定領域とは独立した遺伝的制御を受けることが確認された。
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