研究課題/領域番号 |
21K14849
|
研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
渋谷 知暉 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 助教 (60818219)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | ブドウ / 果実発達 / ジベレリン応答 / 転写因子 |
研究実績の概要 |
単為結果の誘発および果実肥大の促進を目的としたジベレリン処理は、ブドウの生産において非常に重要な技術となっている。しかし、ジベレリンの感受性を向上する遺伝子突然変異や同種内での遺伝的多型については知られておらず、ジベレリン処理の効率化に向けた育種のための基盤となる知見が不足している。本研究では、ジベレリン処理の効果が高く通常よりも大粒化する‘デラウェア’の突然変異系統において、ジベレリン高感受性のメカニズムを明らかにするとともに、高感受性の原因となる遺伝子突然変異を特定することを目的としている。この目的を達成するために、本研究ではジベレリンの受容系を担う遺伝子群の発現調節に関わる遺伝子に着目して研究を進めている。本研究ではジベレリン高感受性系統と通常系統との間で、果実発達期の遺伝子発現プロファイルを比較し原因遺伝子の候補を絞り込んでいる。また、発現変動以外の変異としてタンパク質のアミノ酸変異を誘発する遺伝子突然変異を探索するためにRNA-Seqで得られたリードをk-mer分解し、系統特異的な配列を探索しようとしたが、検出される候補変異配列数が多く分析方法の再検討が必要であった。遺伝子発現プロファイルの比較から見出された発現変動遺伝子については、アノテーション情報をもとに候補を絞り、果実発達のモデルであるトマトに導入し機能を解析する実験をはじめている。加えて、ジベレリン高感受性系統における果実発達の特徴を理解するために、ブドウ果実の主な構成組織である中果皮における細胞の分裂や肥大の様子をジベレリン高感受性系統と通常系統とで比較し、細胞分裂のサイクルに差があることを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画のうち、遺伝子発現プロファイルの比較に基づく候補遺伝子の絞り込みについては概ね順調に進んでおり、遺伝子機能解析のための形質転換実験にも進むことができた。このため、形質転換実験に使用する設備の増設や消耗品の使用増が生じたため、次年度の経費を前倒しして研究を進めた。ただし、発現変動以外に原因がある可能性についての検証は十分に進められていない。以上のことを総合しておおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き候補遺伝子の絞り込みと機能解析とを進める。突然変異系統における変異配列の探索においては、RNA-Seqで得られたリードのk-merを用いた解析を実施したが、候補配列を絞り込むには至らなかった。これを改善するために、リードに含まれるであろう種々のエラー配列の除去を行った上で解析する、ゲノム配列のリードを含めて解析を実行するといった対処法で解決を図る予定である。また、候補遺伝子については、転写因子を想定していることから、計画に従ってジベレリン受容関連遺伝子に共通する発現調節因子であるかどうかの実験を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
一部の実験計画を前倒して実施するにあたり、次年度の使用額を10万円前倒して請求して研究を進めていたが、実験の遂行に必要な消耗品の使用が予想よりわずかに下回ったため次年度使用額が生じるに至った。この次年度使用額は、遺伝子組換え実験や遺伝子発現解析実験に必要な消耗品の購入に充てる。
|