タマネギの収穫時期(早晩性)を変えずにりん茎重の増大を引き起こす要因は、地上部の生育速度の違いであることを明らかにした。本研究の開始前に申請者は早晩性は変わらないが、特定のゲノム領域のDNAマーカー遺伝子型の違いにより、りん茎重が大きく異なることを明らかにしていた。DNAマーカー遺伝子型が「+/+」型ではりん型重が大きくなるが、「-/-」型では小さくなる。このDNAマーカー遺伝子型が「+/-」のヘテロ型の1個体の後代から、「+/+」、「-/-」型で固定した兄弟系統を育成した。これらの系統を生育初期から後半まで一定間隔で抜き取り調査を行い、両者の地上部の形質値を比較した。その結果、播種後の約2ヶ月の育苗期間から葉面積、地上部乾物重に違いが見られ、圃場定植後の栽培期間ではその差がさらに拡大することが明らかになった。一方で、りん茎の肥大開始時期や収穫適期では、両者で顕著な差は認められなかった。従って、葉面積等の地上部生育の速度の違いにより、同化産物量や転流量に差が生じ、結果としてりん茎重に顕著な差を生じると考えられる。また、葉の生育が旺盛な時期に光合成速度を測定したところ、系統間で有意差は認められなかった。また、播種後の育苗を25℃一定、16時間の長日条件下で栽培したところ、圃場環境での育苗で見られた地上部生育量の有意差は認められなかった。この結果から、特定のゲノム領域に座乗する原因遺伝子は、温度や日長等の圃場の気象環境に反応し、地上部生育速度に影響していると推測できる。
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