タマネギ乾腐病菌のSIX3エフェクターはタマネギに対する病原性因子として働いているが、その詳しいメカニズムは不明である。SIX3タンパク質は感染したタマネギの盤茎部および根で発現しているが、特に盤茎部でより多く蓄積している。そこで本研究では、タマネギの盤茎部に焦点を当て、タマネギ乾腐病菌のSIX3の細胞内局在とその機能を明らかにすることを目的とした。抗SIX3及び抗SIX5抗体を用いた免疫染色を実施し、タマネギおよびシャロットの盤茎部におけるSIX3及びSIX5の局在を調査した。免疫染色の結果、SIX3およびSIX5は乾腐病感受性タマネギの盤茎部における維管束部およびアポプラスト領域に局在していた。一方、抵抗性シャロットでは維管束部においてのみSIX3およびSIX5の局在が共に観察された。SIX3およびSIX5のアポプラスト領域への共局在が感受性をもつタマネギで観察され、抵抗性のシャロットではみられなかったことから、SIX3およびSIX5は盤茎部のアポプラスト領域に共局在することで病原性に寄与しているものと推察した。事実、Yeast two-hybridにおいてSIX3とSIX5は相互作用していた。 一方、SIX3およびSIX5遺伝子の機能を明らかにするために、遺伝子破壊株をそれぞれ作製し、タマネギおよびシャロットに接種した。その結果、野生株およびSIX3破壊株を接種したシャロットは無病徴であったのに対して、SIX5破壊株を接種したシャロットは激しい萎凋症状を示した。このことから、SIX5はシャロットに対する非病原力因子として働くことを見出した。SIX5破壊株を接種したシャロットのRNA-seqデータからSIX5レセプター候補遺伝子を51個見出しており、今後これら候補遺伝子とSIX5の直接的な相互作用を解析する研究を行うべきと考える。
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