研究課題/領域番号 |
21K14858
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研究機関 | 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター |
研究代表者 |
柏 毅 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 生物資源・利用領域, 任期付研究員 (60766400)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ダイズ / ダイズ紫斑病 / ゲノム |
研究実績の概要 |
本研究は、植物病原性糸状菌の比較ゲノム解析をもとに、植物に対する病原性に関与する遺伝子群、特に、病斑の形成に関わるような遺伝子の探索を目的としている。本研究では、最初に、ダイズの重要な病原菌である紫斑病菌の完成度の高いゲノム配列を取得することを計画した。また、取得したゲノム配列から、病原性に関与することが推定される遺伝子群を選抜すること、さらに、ダイズ紫斑病菌と同じCercospora属のダイズ斑点病菌と比較ゲノム解析を実施し、2つの病原菌ゲノムから推定された病原性関連遺伝子の構成を比較することを計画していた。 まず、ダイズ紫斑病菌のゲノム解析を行った。日本産のダイズ紫斑病菌であるMAFF 305040株のゲノム配列を解析したところ、合計34 Mb程度、9本のコンティグで構成されるゲノム配列を取得できた。取得した配列は、オンラインデータベースで公開した。さらに、ゲノム配列からコーディング領域を推定した。予測された遺伝子産物の配列をもとに、ゲノム配列の完成度を推定したところ、99%以上の高い数値が得られた。コーディング配列や、予測された遺伝子産物の配列をもとにして、病原性に関与することが推定される遺伝子群として、エフェクター遺伝子、二次代謝遺伝子クラスター、糖質関連酵素遺伝子などを選抜した。また、今回取得したダイズ紫斑病菌のゲノム配列から予測したコーディング領域の情報と、すでにオンラインデータベースに公開されていたダイズ斑点病菌のゲノム配列から予測したコーディング領域の情報を利用し、2つの病原菌(ダイズ紫斑病菌、ダイズ斑点病菌)のゲノム配列中の、病原性に関与することが推定される遺伝子群の構成を比較した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ダイズ紫斑病菌のゲノム解析を実施し、完成度の高いゲノム配列を取得した。このゲノム配列は、今後の研究の基盤的な情報として活用する。また、取得したゲノム配列情報はオンラインデータベースで公開した。さらに、ゲノム配列から予測されたコーディング領域の情報を利用して、病原性に関与することが推定される遺伝子群を探索した。これらに加え、ダイズ紫斑病菌と近縁な関係にある他のダイズ病原菌のゲノム情報を利用して、ダイズ紫斑病菌との比較解析を実施し、病原性に関与することが推定される遺伝子群の構成を比較した。以上から、本研究課題の進捗状況について、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ダイズ紫斑病菌のゲノム解析の結果として見出した、病原性に関わることが推定される遺伝子の破壊株等を作出し、病原性に関連する性状を調査する。具体的には、遺伝子破壊株等と親株を宿主植物であるダイズに接種し、病斑の大きさ、葉の面積に占める病斑面積の割合等を比較する。この際、他のダイズ病原菌のゲノム情報等も活用し、調査対象とする遺伝子の候補を選抜する。ダイズへ病原菌を接種する試験では、ダイズ植物体から切り取った葉に菌体を接種し、接種後の葉片を高湿条件下で維持することで、発病を促進する方法の利用を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
ダイズ紫斑病菌が宿主感染時に発現させている遺伝子の探索を目的として、紫斑病菌を接種したダイズのトランスクリプトーム解析を実施することを計画している。このトランスクリプトーム解析は1年目から2年目にかけて実施する計画で、1年目の予算に当該費用を計上していた。しかし、実際に解析を実施するのは2年目になったため、当該費用は次年度に使用し、トランスクリプトーム解析を実施することとした。
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