研究課題/領域番号 |
21K14862
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
浜島 りな 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (20784408)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | バキュロウイルス / 昆虫細胞 / タンパク質発現系 / リボソーム / カイコ |
研究実績の概要 |
バキュロウイルスは、宿主細胞の機能を高度に制御し、自身の増殖を遂行する。その最たるものは、細胞タンパク質の合成の遮断と、単一のウイルスタンパク質 (ポリへドリン) の爆発的な発現誘導であり、感染の最終段階では、ポリへドリンは結晶体を形成し、その量は細胞の全タンパク質量の約30-50%という驚くべき割合になる。しかし、大量発現を担う分子機構の詳細は解明されていない。本研究は、バキュロウイルスが単一のウイルスタンパク質の大量発現をどのように達成するのかを明らかにすることを目的として行う。 本年度は、ポリヘドリンプロモーター制御下の遺伝子の大量発現を担う分子機構について、より容易に解析を進めることを目的として、ポリヘドリンプロモーターとレポーター遺伝子を保有するプラスミドを作出し、バキュロウイルス感染によりレポーター遺伝子の大量発現が誘導されるかどうかを調査した。その結果、今回作出したプラスミドではレポーター遺伝子の大量発現が誘導されない可能性が示され、ポリヘドリンプロモーターがウイルスゲノム上に位置することが大量発現を達成する上で重要であることが考えられた。今後、さらなる検証を進めていく予定である。また、リボソームに着目した解析を行うため、ショ糖密度勾配遠心法による昆虫細胞のリボソーム精製法の検討を進めた。40S、60Sリボソームの分画については引き続き検討を続ける必要があるが、80Sリボソームについては高い再現性での分画が可能となった。 さらに、我々の研究室で進めている昆虫細胞のバキュロウイルス感染に対する応答の解析から、バキュロウイルス感染を負に制御する機能をもつと予測される宿主タンパク質を見出し、この宿主タンパク質の発現を抑制すると、ウイルスタンパク質の発現量が有意に減少することを明らかにした。この成果をまとめた論文については、国際誌にて査読を受け、現在再投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ポリヘドリンプロモーター制御下の遺伝子の大量発現を担う分子機構を解明するために、昨年度作出したポリへドリンプロモーターによりレポーター遺伝子を発現するレポーターウイルスに加え、ポリヘドリンプロモーターとレポーター遺伝子を保有するプラスミドをベースの実験系、ショ糖密度勾配遠心法によるリボソーム精製法の確立を進めている。また、昆虫細胞のバキュロウイルス感染に対する応答の解析から、バキュロウイルス感染を負に制御する機能をもつと予測される宿主タンパク質を見出し、当初の研究計画とは異なる方向性からも、バキュロウイルスが単一のウイルスタンパク質の大量発現を達成する分子機構の解明に向けたアプローチを進めている。これらのことから、当初の研究計画よりも予備実験が必要であるものの、研究開始当初には想定していなかった宿主タンパク質の発見もあったため、研究目的の達成に向けて、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、ショ糖密度勾配遠心法によるリボソームの精製法と、昨年度取り組んだタグ抗体を用いた免疫沈降によるリボソームの精製法について、条件の検討を進めて高い再現性で分画できる手法を確立し、バキュロウイルス感染時の昆虫細胞のリボソームの挙動について調査を行う。また、ポリヘドリンプロモーターがウイルスゲノム上に位置することが大量発現を達成する上で重要である可能性について、さらなる検証を行い、ポリヘドリンプロモーター制御下の遺伝子の大量発現を担う分子機構の解明に寄与する知見を得たい。さらに、昆虫細胞のバキュロウイルス感染に対する応答の解析から見出したバキュロウイルス感染を負に制御する機能をもつと予測される宿主タンパク質について、どのような分子機構でバキュロウイルスのタンパク質産生を抑制しているのかを明らかにし、バキュロウイルスがどのように自身のタンパク質合成を促進しているのかを解明する糸口としたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に行ったプラスミドベースの実験系は、当初の計画には含まれていなかったが、興味深い結果につながった。また、昆虫細胞のバキュロウイルス感染に対する応答の解析から、バキュロウイルス感染を負に制御する機能をもつと予測される宿主タンパク質を見出した。そのため、次年度に、プラスミドベースの実験系を用いた研究や宿主タンパク質の機能解析に必要な試薬類を購入する必要が生じた。
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