研究実績の概要 |
オオホシカメムシは、環境中からバークホルデリア属の共生細菌を選択的に獲得し、細胞内に保持する「環境獲得型の細胞内共生系」を築く。本研究では、遺伝子組換え(非)共生細菌を用いた実験アプローチにより、オオホシカメムシへの細胞内共生を可能としている共生細菌側の責任遺伝子を同定することを目的とした。まず、各種バークホルデリア属細菌(オオホシカメムシより分離培養した共生細菌3株を含む22種)のオオホシカメムシへの感染実験と比較ゲノム解析により、オオホシカメムシへ共生可能な細菌ゲノムに特異的に保持されている遺伝子、欠失している遺伝子、あわせて136遺伝子を抽出した(オオホシカメムシ共生細菌の全遺伝子数は、およそ8,300遺伝子)。これら遺伝子の中にオオホシカメムシへの細胞内共生を可能としている共生細菌側の責任遺伝子が含まれていると考え、これらを責任遺伝子の候補とした。 共生可能な細菌が特異的に保持する遺伝子を対象に、共生細菌ゲノム中の位置や機能アノテーションの情報をもとに、細胞内共生への関与がより強く疑われる候補遺伝子からオオホシカメムシ共生細菌において遺伝子欠損株を作製した。これまでに8株の遺伝子欠損株およびその蛍光タンパク質発現変異株の作製に成功した(欠損させた候補遺伝子は合わせて20遺伝子)。 これら遺伝子の細胞内共生への関与を検証するため、オオホシカメムシへの感染実験を行い、羽化率の算出と消化管内における局在を観察した。いずれの欠損株においても、野生株と比べて羽化率の減少は見られず、野生株同様、消化管の上皮細胞内に局在していることが確認された。よって、これら20候補遺伝子は細胞内共生への関与が認められず、共生細菌側責任遺伝子ではないと結論づけた。今後は、その他候補遺伝子の欠損株作製と感染実験を継続し、引き続き細胞内共生を可能とする責任遺伝子の同定を目指したい。
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