研究課題
本研究では、オランウータンの繁殖システムを考慮したモデルを用いて、再導入が野生個体群の持続可能性に与える長期的影響を予測し、オランウータンの野生復帰事業の改善へ貢献することを目指す。初年度となる令和3年度は新型コロナウイルス感染症の世界的蔓延による渡航制限のため、マレーシアでの調査活動を遂行することができなかった。そこで既存のDNAサンプルとデータを用いて、野生のボルネオオランウータンの父性解析を行い、野生個体群の繁殖システムの解明に取り組んだ。9頭の子を含む32個体について糞から抽出したDNAを用いて、マイクロサテライト11領域について遺伝子型を決定し、その結果を国内学会で発表した。代表者による半野生個体群を対象とした先行研究では1頭の優位形態を持つオス(フランジオス)に繁殖成功が集中し、劣位形態を持つオス(アンフランジオス)は初産の子の父親となることでわずかに繁殖成功を収めることが報告されていたが、本研究では子の父性は1頭に集中しておらず、野生個体群では複数のオスが子を残すことがわかった。再導入個体の供給元である半野生個体群と野生個体群の間では、生息環境の違いからオスが採用する繁殖戦術が異なることが考えられ、その結果としてオスの繁殖成功の分布も異なる可能性がある。今後の課題として、より一般性の高い結果を得るためにサンプル個体数を増やすことが必要である。令和4年度は米国における研究滞在のため、本研究を一時的に中断する。本研究の再開後には、マレーシアへ渡航して野生個体群および半野生個体群において非侵襲サンプルを追加採取する予定である。
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Evolution and Human Behavior
巻: 43 ページ: 169~180
10.1016/j.evolhumbehav.2021.12.004
https://sites.google.com/view/tomoyuki-tajima
https://www.orangutan-research.jp/