研究課題/領域番号 |
21K14869
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研究機関 | 滋賀県立琵琶湖博物館 |
研究代表者 |
田畑 諒一 滋賀県立琵琶湖博物館, 研究部, 主任学芸員 (00793308)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 淡水魚 / MIG-seq / mtDNA / 系統地理 / 遺伝的集団構造 / 日本 / 水族館 / 生息域外保全 |
研究実績の概要 |
本研究では、ゲノムワイドな核DNA情報を用いて、日本を中心とした東アジア地域の淡水魚類の多数種を対象にした遺伝的集団構造の把握と保全戦略の策定を検討する。種内における遺伝的に固有な地域集団(遺伝的集団)を把握することは、生物多様性の保全や生物資源の管理には必要不可欠である。申請者はこれまでミトコンドリアDNA (mtDNA)を用いた琵琶湖産魚類を中心とした淡水魚の系統解析や遺伝的集団構造把握、進化生物学的研究を行い、その中で比較のために用いた核ゲノム解析から複数の種における核ゲノムとmtDNAによる遺伝的集団構造での不一致を見出してきた。これまで多くの生物でmtDNAによる分析が行われてきた。そのため、現在、各地で行われている生息域外保全、系統保存がmtDNAデータに基づいており、申請者が見出してきたmtDNAと核ゲノムの不一致から考えれば、地域集団の、ひいては種の絶滅を防ぐためには、核ゲノムデータを用いた真の遺伝的集団構造も加味した保全戦略を策定することが緊急の課題となっている。 本年度は、これまでに実施した種の補完的な実験に加えて、新たに複数の種類についてMIG-seq法を用いた系統地理解析および集団遺伝分析を行った。その中には水族館等で継代飼育している個体群の素性が本当に正しいのか、また今後個体群の入れ替えを行う際に元の個体群がきちんと管理されていた個体群(交雑個体が入っていない個体群)かを確かめたものに加えて、今後の野生復帰の際の検討材料になる種も含まれている。一部種群については、学会などで発表を行ったが、本年は所属施設で起きた大型水槽の破損事故の対応に忙殺されており、論文投稿など研究の完遂ができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度も順次実験や学会での発表を進めてきたが、2023年2月に発生した所属の博物館の水族展示室の大型水槽破損事故の原因調査や撤去作業、展示室再開、他の破損水槽のアクリル交換工事、新規作成水槽の設計業務への対応にあたっている等、当初計画の目標よりも、採集調査の回数や実験種数・個体数が少なくなっている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き分析予定の種群について、分析を進めていく。分析に着手していない種についても、分析用標本やDNA試料は概ね揃っているものが多いため、分析に着手していく時間さえ確保できれば、挽回は可能と思われる。また実験・解析補助員の確保により、実験・解析を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属する博物館で生じた大型水槽破損事故の対応のため、研究の遂行が困難となったため、研究計画に大きな遅れが生じた。次年度は研究補助員の増員に伴い、謝金などの支出が増える。またその補助員に実験、解析を依頼するため、物品購入費も増加することが想定されている。当該研究が4年目に入るため、成果発表の学会参加旅費および保全の現場への還元のための打ち合わせの増加が見込まれるため、旅費についても執行額が増えると想定されている。
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