研究課題/領域番号 |
21K14874
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
金澤 弓子 東京農業大学, 地域環境科学部, 准教授 (50572517)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | サクラ / 都市 / カンヒザクラ / 環境ストレス |
研究実績の概要 |
本研究では、都市に生育するサクラ(カンヒザクラ系統)の植栽環境のうち、特に水分と温度によるストレスに焦点を当て、適切な植栽管理を行う上での、温度、水分条件の知見を得ることを目的とする。 二年目にあたる本年度は、カンヒザクラを用いた年間の体内糖分変動の調査の継続、対照種を用いた異なる水分条件下での生育調査、植栽個体の土壌環境および地上部健全度の調査を中心に行った。 カンヒザクラ体内の糖類については、年間を通して調査を行った。屋外に植栽された樹齢約20年とみられる3個体のカンヒザクラを対象に、枝葉内の可溶性糖分(グルコース、スクロース、フラクトース)およびカリウムを月1度の頻度で小型反射式光度計を用いて測定した。その結果、測定した糖類のうち、どの時期においてもスクロースは含有量が少なく、部位別では、葉においては年間で検出できる時期が2ヶ月のみと限られた。また、枝の樹皮を除去した内部の材についてはある程度のスクロース含有が認められたものの、年間の半分以下で検出ができなかった。また、樹木の衰退度判定表の評価基準(一般財団法人日本緑化センター 2009)を基に、対象個体の地上部の生育についてもあわせて確認を行った。その結果、衰退度区分が不良となるものでは、糖分量が低くなる傾向がみられた。 土壌環境および地上部健全度の調査では、対照種(ソメイヨシノ)において、土性では粒径が細かく透水性が低いとされる土壌に生育する場合に衰退度値が大きくなる傾向がみられ、土壌三相では液相率の割合が小さい場合に衰退度値が小さい傾向があった。これらの結果を踏まえ、カンヒザクラ系統の植栽個体の土壌環境および地上部健全度の調査を継続するとともに、圃場での生育調査の結果の検証を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カンヒザクラ樹体内の体内糖分調査では、可用性糖分の糖の違いあるいは枝葉の部位の違いによる年変動がある程度示された。また調査結果より、糖分量の多少は時期(季節)に加えてその個体の健全度との検証も必要だと考えられた。対照種を用いた植栽個体の土壌環境および地上部健全度の調査から、土壌の物理性が個体健全度に影響があることが示唆された。これらの結果とカンヒザクラ系統における植栽個体調査及び圃場での生育調査の結果について検証を行う準備が進められたといえる。年末まで温度センサー等の入手が困難であったため、初年度の遅れを取り戻せなかった部分もあるが、本年度はおおむね計画通りに実施され、進捗状況はおおむね良好であった。
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今後の研究の推進方策 |
一年目より実験に遅れがある部分については、最終年度も引き続き調査を行う。特に、現在実施しているカンヒザクラの体内糖分の年変動については継続して行い、健全度との関係を検証していく。追加調査項目として、人為的に短期間の水分あるいは温度ストレスを与えた時の樹体内の可用性糖分量の測定などを予定している。また、カンヒザクラ系統の土壌環境及び健全度調査と、対照種の圃場の生育調査についても継続してすすめ、比較検証を行う。特にカンヒザクラ系統の植栽個体の調査では、実際に都市環境ストレスにさらされた場所での調査を夏期に実施し、本年度までの結果と比較、検証することを予定している。これまで集積してきた調査結果は国際樹芸学会、樹木医学会、日本造園学会等での発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度までのCOVID-19の影響で、屋外現地調査が当初予定より回数が減ったこと、また半導体不足による購入予定センサー類の納品遅延等が引き続き生じ、次年度使用額が生じていた。次年度は引き続き試薬を用いた樹体内糖分の計測実験を行うほか、現地調査を行う予定であり、適切な予算執行を予定している。
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