研究課題/領域番号 |
21K14879
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研究機関 | 地方独立行政法人北海道立総合研究機構 |
研究代表者 |
綱本 良啓 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 産業技術環境研究本部 エネルギー・環境・地質研究所, 研究主任 (00884355)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 種子散布 / ヒグマ / ニホンジカ / ハマナス / 牧草 |
研究実績の概要 |
エゾヒグマ:令和3年度に実施した採餌試験で回収した対象植物3種(ウワミズザクラ、ヤマブドウ、サルナシ)の種子を用いた発芽試験を行なった。果肉が除去された健全な排泄種子の発芽率は、ウワミズザクラ32%、ヤマブドウ51%、サルナシ19%であった。過去に取得した野生個体3頭のGPS追跡データと採餌試験で測定した消化管通過時間を用いることで、種子散布距離を推定した。種子散布距離は、ウワミズザクラ 平均279 m・最長5994 m、ヤマブドウ 平均301 m・最長4512 m、サルナシ 平均233 m・最長6112 mであった。果肉が付いた状態で排泄された場合のサルナシ種子は、発芽率が低い一方で、消化管通過時間が長いため種子散布距離が長いことが明らかになった。以上のことから、植物の種類により違いはあるものの、対象とした3種いずれについてもエゾヒグマは有効な種子散布者であることが示された。 エゾシカ:昨年度に主に北海道東部で回収した野生個体の糞を用いた発芽試験の結果、183サンプル(合計215 g)から73個体の発芽が観察された。動物園の飼育個体を用いて採餌試験及び発芽試験を行なった。対象植物として、液果樹木(ハマナス、ヤマブドウ、サルナシ)及び外来牧草(シロツメクサ、ナガハグサ、オオアワガエリ)の種子を与えた。液果樹木については、排泄された糞内からの発見率は低く、多くの種子が体内で破壊されていることが示唆された。破壊されない種子は、ほとんどの場合2日以内に排出されていた。破壊されずに排出された種子は、現在発芽試験を実施中である。外来牧草については、排泄された糞内から種子を識別することが困難であった。そのため、種子の破壊率は測定せずに、乾燥させた糞の一部を用いた発芽試験を実施中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エゾヒグマについては、対象植物3種について、消化管通過時間、発芽率、散布距離が明らかになり、種子散布者として機能していることが示された。エゾシカについては、採餌試験を開始することができ、消化管通過時間および液果樹木の種子破壊率を測定することができた。
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今後の研究の推進方策 |
エゾシカについては、積雪の影響により、採餌試験を2回しか実施することができていない。今後、同様の手法で実施回数を増やし、消化管通過時間・種子破壊率・発芽率についてより精度の高い推定を行う。また、エゾヒグマと同様に、過去に取得した野生個体のGPS追跡データを利用することで、種子散布距離を推定する。 エゾヒグマについては、種子散布距離推定に用いたGPSデータとは異なる年のGPSデータを用いた推定を行い、年変動や個体差について比較を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
採餌試験及び発芽試験について、分析を担当する補助者を短期間しか雇用できなかったこと、また、一部が積雪のため実施できなかったことにより、予定よりも人件費の支出が少なくなった。次年度に補助者を雇用する人件費として使用する予定である。
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