研究課題
2022年に国際学術誌Remote Sensing of Environmentに発表した手法を用いて、衛星光学センサーMODISから推定した北極海全域の海氷タイプマッピングを行った。このデータセットは日平均・500mの時空間解像度で2000年から現在までの20年以上の長期間をカバーする大規模なものであり、他の衛星・モデルデータと照らし合わせることで気候変動に伴う海氷・海洋環境変動と海氷タイプとの関係を調べる上で非常に有益である。上記の海氷タイプデータセットに加えて、同じく衛星光学センサーMODISを用いた北極海全域の植物プランクトンバイオマスのデータセットも構築した。さらに、2021年に国際学術誌PLoS ONEに発表した手法を用いて、植物プランクトンバイオマスの時系列から春季・秋季ブルームの有無とそれらの規模・期間・時期をガウス関数に基づいて推定した。なお、使用した植物プランクトンバイオマス推定アルゴリズムは、既存のデータセットに2021年度および2022年度の観測航海で取得したデータを加えた合計249観測点のデータセットを用いて、北極海で最も精度が高いものを選出した。また、海氷に由来するエラー(adjacency effectとsub-pixel contamination)を最小限に抑えるために衛星マイクロ波センサーAMSR2の海氷密接度を参照し、海氷密接度20%を基準にマスク処理を施した。
2: おおむね順調に進展している
膨大な衛星データの処理に時間を要したが、当初の計画通り2022年度中に本研究の完遂に必要なデータセットを構築できた。
最終年度である2023年度は、これまでに準備した20年以上の長期間をカバーする衛星データセットの解析に取り組む。特に、チャクチ海や東シベリア海などの水深の浅い海域に堆積物を多く含む海氷sediment-laden iceが広く分布することがこれまでの衛星観測で明らかになってきた。これらの海域は従来の研究でも生物生産が活発な海域と知られており、sediment-laden iceの分布との密接な関係が期待される。また、同程度の水深でありながらsediment-laden iceが極めて稀である海域にも着目し、両海域を比較することで、sediment-laden iceと植物プランクトンブルームの特徴を統計的な手法を中心に評価する。
昨年度の観測の余剰分が想定よりも多かったため、観測関連の機材・消耗品代に余剰金が生じた。次年度使用額は、オープンアクセスジャーナルへの論文出版費に充てる。
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すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)
Journal of Oceanography
巻: 78 ページ: 311~335
10.1007/s10872-022-00646-5
Water
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