研究課題
これまでの研究期間中に構築した衛星リモートセンシングデータ(sediment-laden iceおよび植物プランクトンバイオマス)に基づき、海氷タイプ(sediment-laden ice or sediment-free clean ice)が植物プランクトンの増殖過程に与える影響を評価した。まず、季節平均の植物プランクトンバイオマスとsediment-laden iceが卓越する海域で顕著に高い植物プランクトンバイオマスが観測された。一方で、sediment-free clean iceは外洋域に広く分布しており、それらの海域では植物プランクトンバイオマスは一様に低い傾向にあった。これらの傾向は衛星リモートセンシングがカバーする春から秋にかけて共通しており、海氷タイプと植物プランクトン群集に密接な関係があることが示唆された。また、ガウス関数を用いた植物プランクトンバイオマス時系列変化のモデリングによって統計的に導かれた植物プランクトンブルームの主な特徴は、sediment-laden iceが卓越する海域ほどブルームの規模が大きく、かつ長期間にわたって継続する傾向が捉えられた。以上の結果から、本研究は北極海をはじめとする海氷域における植物プランクトン、ひいてはそれを基盤とする海洋生態系の研究において、海氷タイプに着目した取り組みの重要性を提示した。加えて、北極海においてsediment-laden iceの面積は研究対象期間(2003年から2022年)を通して有意に増加しており、sediment-laden iceに着目した研究は益々重要な課題となっていくことが予想される。これらの成果は複数の国際学会で報告されており、近日中に査読付き国際ジャーナルに投稿する予定である。
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Deep Sea Research Part I: Oceanographic Research Papers
巻: 208 ページ: 104313~104313
10.1016/j.dsr.2024.104313