研究課題/領域番号 |
21K14902
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
高山 佳樹 創価大学, 理工学部, 助教 (00897605)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 海産浮遊性カイアシ類 / 繊毛虫 / 食品廃棄物 / プランクトン工学 / 生物餌料 / 卵生産 |
研究実績の概要 |
2021年度においては、①申請者が現場海域より単離した繊毛虫の種同定、②繊毛虫を浮遊性カイアシ類3種に給餌させる飼育実験を行い、カイアシ類の摂餌速度、生存率、卵生産を測定し、繊毛虫の餌料効果を検証した。 ①相模湾より単離した繊毛虫は、形態学的な特徴からEuplotes sp.と同定され、18S rRNA遺伝子を分子系統解析したところ Euplotes vannusと同定された。本種を後述する実験に使用した。 ②繊毛虫を、浮遊性カイアシ類3種(Acartia steueri, Oithona oculata, Pseudodiaptomus nihonkaiensis)に給餌する実験区、微細藻類を給餌する対象区を設けて2週間程度の飼育実験を行い、カイアシ類の摂餌速度、生存率、卵生産速度、卵の孵化率(A. steueriのみ)を測定した。微細藻類餌料については、事前に、各カイアシ類種ごとに複数種の微細藻類を検討し、生存率・卵生産を最大化した微細藻類を上記の実験では用いた。 その結果、全てのカイアシ類が繊毛虫を摂餌し、その摂餌量は微細藻類と同等、もしくはそれ以上の値を示した。A. steueriは繊毛虫区において生存率が顕著に低下し、やがて卵生産が停止した。P. nihonkaiensisでは、繊毛虫区においても卵生産が行われたが、生産された卵数は微細藻類区の半数程度であった。興味深いことに、繊毛虫と微細藻類を混合した餌料を給餌したところ、生産した卵数は微細藻類区を上回った。O. oculataにおいては、繊毛虫区の生存率は微細藻類区を上回り、生産された卵数は微細藻類区と同程度の値を示した。 これらの結果より、微細藻類の餌料としての効果はカイアシ類種ごとに全く異なり、本研究で提案する繊毛虫を餌料として用いるプロセスの対象種としてはO. oculataが適すると示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カイアシ類は現場海域においては微細藻類に加え、繊毛虫といった微小動物プランクトンをその重要な食物源としていることは古くから知られている。しかし、繊毛虫の餌料としての効果を検証したラボ実験では、繊毛虫を給餌した際にカイアシ類の卵生産が増加したとの報告が数例存在する一方で、卵生産が低下したとの報告もあり、餌料としての効果は不明瞭であった。 本研究では、相模湾の内湾に優占し、分類が異なるカイアシ類3種を対象に繊毛虫を給餌する実験を行ったところ、明白な種特異的な餌料効果が示された。得られた結果に加えて、文献調査を行い解析することで、繊毛虫がどのような分類群、また生活様式をもつカイアシ類種に有効であるか傾向性を解明することが期待され、ひいては当該分野の混乱した知見の整理に大きく寄与する。 当初は2022年度(2年目)に対象とするカイアシ類種を決定する予定であったが、2021年度に得られた成果によって、対象種・対象とするべき分類群を大きく絞り込めたことは大きな成果である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は、現場海域からの単離した繊毛虫の種同定を行い、繊毛虫とカイアシ類3種を用いた組み合わせ実験が終了し、実験に使用するカイアシ類種を決定した。 当該年度は、食品廃棄物を基質とし、単離された繊毛虫の増殖試験を主に行う。具体的には、繊毛虫の増殖に好適な食品廃棄物の選定と、それぞれの食品廃棄物で培養した際の繊毛虫の生化学組成の測定を行う。また、選定された食品廃棄物を基質として培養した繊毛虫を、昨年度選定をしたカイアシ類種に給餌する飼育実験を行い、微細藻類を給餌していた従来の手法との比較を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査海域からカイアシ類試料を採集し、培養実験を行う予定であったが、感染症の流行で断念したため、差額が生じた。
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