微細藻類は廃棄性有機物から回収される栄養やCO2を用いて有価物を生産でき、循環型社会形成への貢献が期待される。しかし、廃棄物由来窒素の大半は高い毒性を持つアンモニア(NH3)であり直接利用が困難である。そこで本研究では窒素を直接供給する手法として、非破壊的な藻類NH3阻害の検知による窒素供給制御に向け、種々の蛍光手法を用いたNH3阻害検知法の確立を目指した。 昨年度までに試験した励起スペクトル分析では、クロロフィル由来の440nm励起と比較して、カロテノイド由来と考えられる470-490nm付近がアンモニア濃度に応じて高くなる傾向にあり、緑藻Chlorella でR2=0.669 (N=20)、ハプト藻Isochrysisで暴露24h後にR2=0.902 (N=4) の比較的高い相関が確認された。 最終年度には、新たにパルス振幅変調(PAM)分析および励起光照射直後の蛍光変化である誘導期現象に着目し、これら蛍光値の多変量解析によるNH3阻害の判別を試験した。PAM分析ではPSIIの最大量子収率を示すFv/Fmが暴露直後わずか数分(Time 0)でもアンモニア濃度と有意な相関を示し、アンモニア阻害検知に有効であった。しかしながら、両藻類種において、対照区でも培養開始後に光適応が原因と見られるFv/Fm値の減少が確認され、Fv/Fm値だけでは光適応とアンモニア阻害を区別できないことを示唆した。 そこで、続いて誘導期現象の多変量解析を試験したところ、C. sorokinianaにおいて、培養時間に関わらず約70%の精度で対照区をアンモニア添加区と区別することができ、光適応の影響を除くことができた。 本研究により種々の非破壊的な蛍光分析により藻類のアンモニア阻害検知が可能であることが明らかとなった。今後は各手法の制限を補いつつ屋外環境下でも実用可能な手法の開発を進める。
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