今年度は、半数体や半数性細胞の利用に向けた知見の集積のため、周年採卵が可能なゼブラフィッシュをモデルとして、雌性発生半数体及び雄性発生半数体を誘起し、細胞活性の解析を行った。 胚発生過程における外部形態の観察では、雌性発生胚と雄性発生胚の両方で、通常二倍体に対する胚発生の遅れが観察された。特に雄性発生胚の発生遅延が大きく、嚢胚形成期に胚盤葉が全体的に肥厚する形態異常も雄性発生胚で顕著だった。2種類の半数体胚の間に胚発生異常の程度の差異が生じたのは、雄性発生胚では作出の過程で、卵への紫外線照射を必要とすることが原因と考え、通常二倍体の受精卵に紫外線照射をしたときの胚発生の観察を追加で行った。二倍体胚であっても雄性発生誘起と同じ照射量の紫外線を照射した胚は、嚢胚形成の遅れと胚盤葉の肥厚が観察されたことから、雄性発生胚では、半数体であることに加えて、卵への紫外線照射が行われることで形態異常が悪化したと考えられる。 また、半数体は個体レベルでは致死となるが、細胞レベルでは生残性をもつという先行研究を踏まえて、胚発生段階ごとの細胞活性を比較した。具体的には、胞胚期および孵化期の胚から細胞を分散し、セルアナライザーを用いて細胞活性(細胞生残性とアポトーシス細胞の有無)を解析した。本解析では2種類の半数体胚の間に違いを検出することができなかったが、胞胚期の半数体の細胞分散において初期アポトーシス細胞が、通常二倍体よりも多く検出された。従って、胞胚期における半数体胚の死亡は、アポトーシスにより誘導されている可能性が示唆された。一方、孵化期胚から分散した半数性細胞では、アポトーシス誘導が検出されなかったことから、孵化期の半数体個体の致死は別の要因から引き起こされる可能性がある。
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