研究課題/領域番号 |
21K14918
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
中村 乙水 長崎大学, 海洋未来イノベーション機構, 助教 (60774601)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 外温性魚類 / 体温調節 / 温度生態 / 熱交換 / バイオロギング |
研究実績の概要 |
外温性の魚類は外界の水温を使って体温を調節しているが、体温調節の際に外界との熱の交換を調節していることが明らかとなってきた。外温性魚類の複数箇所の体温を計測することで、体温調節時の魚類の体温変化の様子を体内での熱の伝搬も含めた熱拡散モデルを用いて評価することを目指した。今年度は、外温性魚類の体表からの距離が異なる2箇所に体温計を装着して野外に放流し、行動的体温調節によって体温が変化する際の体温勾配の計測を試みた。その結果、体温が水温によって低下していく際に体表側の体温が体深部側の体温に先行して低下する場合以外に、体深部側の体温の方が先行して低下する現象が観測された。今後は、体温計測場所を3箇所に増やすとともに観測個体数を増やして、どのような状況でそのような現象が起こるかを検証する。 また、マンボウにおいて水温環境が異なる生息地間で行動的体温調節を行う際の体温変化の様子を比較したとところ、深海で採餌中に極低水温にさらされて体温が低下していくときに熱の損失を抑える生理的調節を行っていることが示唆された。体温低下中と体温回復中では外界との熱の交換が異なることはこれまでにもわかっていたが、これまでの理解では体温回復中に熱の吸収を促進していると考えていた。今回の結果ではそれを覆し、体温低下時に熱の損失を抑えていることが示唆された。本成果を原著論文としてまとめて公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
野外で外温性魚類の複数箇所の体温を計測することには成功したが、野外で心拍数を計測する手法の開発が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の放流実験により、状況によって体温の低下が体表からではなく身体の深部の方から起こる現象が観測された。この観測例はまだ1個体分のデータしか得られていないため、観測個体数を増やしてどのような状況でそのような現象が起こるかを検証する。また、体内の温度勾配をより詳細に観測するために体温計測場所を3箇所に増やす。そして、熱交換と体内の血流の関係を調べるために野外での心拍数の計測を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響で購入予定だった心電ロガーの部品調達ができず、年度内に購入できなかった。納入可能になった際に購入予定である。
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