研究課題/領域番号 |
21K14921
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
森岡 昌子 帯広畜産大学, 環境農学研究部門, 助教 (40838538)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 酪農 / スマート農業 / 経営評価 |
研究実績の概要 |
酪農の生産現場では国際競争の激化と労働力の減少により、一層の省力化と生産の効率化が求められている。これを背景にスマート農業技術の導入に対する期待が高くなっているが、現状の普及は現場の努力や経営主能力に依存し、全経営が適応できるものではない。 日本における自動搾乳ロボットの導入や費用対効果の研究は蓄積されつつあり、頻回搾乳による乳量増加や労働時間の軽減、疾病の早期発見等の経営改善効果が報告されており、コストは多額ではあるが導入の有効性を後押ししている。 搾乳ロボットは牛舎構造の違いから、ガイドフロー方式とフリーカウトラフィック方式の主に2つに分類される。ガイドフロー方式は導入開始当初に多く、牛床→搾乳ロボット→飼槽→牛床のように牛の流れを一方向化しており、日本ではオリオン機械株式会社とGEA社の合弁会社が輸入・販売している。またDeLaval社では搾乳と給餌の順序を入れ替えたフィードファースト方式も採用している。ガイドフロー方式の欠点として、牛群の中で序列の低い牛の待ち時間が長くなり、搾乳回数が減る可能性があり、回数の少ない牛を探し出して個別に搾乳するという作業が発生する。 またフリーカウトラフィック方式は、牛床・搾乳ロボット・飼槽を自由に行き来することができ、牛が自主的に搾乳エリアに行くインセンティブとして、各牛の乳量レベルに応じた配合飼料を搾乳ロボットにおいて給与する構造となっている。この方式は、LELY社とDeLaval社が採用・販売している。ただし誘因となる配合飼料を目的に十分な搾乳時間を空けずに進入する牛がいるため、本来搾乳されるべき牛が入れない時間が発生し、効率性を下げる要因となっている。 以上のように、各社が製造する搾乳ロボットの特徴を整理した。搾乳ロボットの選択は、技術適応後の生産性に大きく関与する要素となるが、その導入過程と技術的評価にまでは至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度の当初の計画では、聞き取り調査を実施して、多様化する搾乳ロボットの導入過程と技術的評価、今日的課題を整理する予定であった。具体的には、ガイドフロー・フリートラフィック・ロータリーパーラーを導入する経営体に、聞き取り調査を行ない、導入過程や経営条件の特徴を整理し、論文として報告することを目標としていた。また、搾乳ロボットと付随して導入される発情発見装置や分娩監視装置、経営データ管理システムのようなICT技術の導入状況の聞き取り調査も予定していた。しかし、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、聞き取り先への配慮と、地域の医療体制を鑑みて、聞き取り調査自体を自粛したため、当初の計画よりも遅れているとした。 なお牛の活動量を感知するデバイスを利用した経営データ管理システムを導入している経営体に対して、メールで可能な範囲での聞き取りを実施しており、機器の導入によって経営的な成果が見られる点を確認している。ただし、その効果が発現する経路が未解明のままなので、今後の課題としたい。 そのほか、この新型コロナウイルス感染症の流行による社会的な出来事を逆に利用して、酪農業界全体に対して搾乳ロボット等を導入することの社会経済的なインパクトを計測する方法を思いついたため、現在計測に関連するデータ収集を試みている。
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今後の研究の推進方策 |
どうしても今でなければ採取できないという類のデータではないため、研究計画を後ろ倒しで遂行し、慎重に聞き取り調査実施の可否を判断したいと考えている。引き続き調査先とは連絡を取りつつ、感染症拡大状況を鑑みて、最大限の対策を講じた上で聞き取り調査を実施する予定である。また現地に赴かずともできる範囲での情報収集を引き続き実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大のため、聞き取り調査自体を自粛した。そのため、研究計画自体を後ろ倒しにし、予定していた支出は一切なかった。
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