研究課題/領域番号 |
21K14925
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
李 冠軍 神戸大学, 農学研究科, 農学研究科研究員 (10896963)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 中国農業 / 耕種農業 / 農業保護政策 / 農業政策の変遷 / 生産関数 / 要因分解 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は農業政策の改革動向を踏まえ,今後の中国農業の保護の在り方を分析することである。具体的には,(1)中国の農業政策の変遷を明らかにするとともに,農業政策の根拠に関する経済理論を明示すること,(2)新たな農業政策が農家経済に及ぼす影響を定量的に実証分析すること,(3)上記の(1)と(2)を踏まえ,新たな農業政策の問題点を析出し,計量経済学的手法による政策シナリオを行い,政策体系の改善効果を明示することの3点である。 2021年度は主に研究目的(1)に記載した分析を実施した。 ①農業政策の経済評価について,これまでの研究レビューを実施し,政策評価の分析手法を整理した。 ②2019年までの中国農業政策の変遷を整理した。そのうえで,農業政策の経済効果を実証分析するためのデータを収集し,必要な集計作業や推計作業を行った。 ③①と②に基づき,農業政策の影響を明らかにする分析枠組みを構築した。具体的には,技術進歩を表す時間変数を説明変数に加えた生産関数を構築した。その際に,農業政策の変遷を踏まえ,中国耕種農業成長の要因分解の枠組みを導出した。 ④上記の①~③によって,農業政策の変遷が農家経済に与える影響を明らかにするための実証分析を行った。実証分析から,(1)2004年~2015年の期間では作付面積,機械や化学肥料の投入が増加し,耕種農業の成長率は4.4%であった。2004年以降中国政府が搾取から保護へ向かう政策転換を行い,生産要素を購入補填することは妥当な農業保護政策であることを確認した。(2)2016年~2019年の期間では慣行的生産要素の投入量が減少したため,耕種農業の成長率は3.6%で鈍化したことがわかった。これは2016年以降農業保護政策が実施されているものの,生産要素の購入補填の財政支出が減少する傾向にあったためと考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中国農業政策の変遷が農家経済に与える影響を明らかにするため,農業政策の変遷,農家経済の動向,農業政策の経済評価の分析手法などを整理した。こうした点は,初年度に実施する項目として提示していたものであり,実現できているため「(2)おおむね順調に進展している」を選択した。 また,上述した中国農業成長の要因分解についての成果は,2021年3月に行われた日本農業経済学会で個別報告を行った。今後報告論文を投稿する予定であり,この点では従来想定していた研究計画よりも進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に実施した分析により,2016年以降は耕種農業の成長率が鈍化したことが明らかとなった。今後,2016年以降の農業政策がどのように農家経済に影響を与えたかを分析し,研究成果を国内外に発信する。また,今後中国農業の保護の在り方を分析するため,政策シミュレーションの計測モデルを構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で①意見交換,②学会の参加がオンライン形式になったため,当初使用を予定していた旅費が不要であった。 本年度から意見交換を対面で開始する予定がある。
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