研究課題
政府の策定したSDGs実施指針の中で掲げられた優先課題の中に気候変動影響評価等の環境対策が盛り込まれるなど、FTAの影響評価においても、交渉時に気候変動影響評価の結果を考慮することがより一層重要となってくると考えられる。CGEモデルを利用したFTAの(事前)影響評価において、近年は企業の異質性(Firm Heterogeneity)の概念をモデルに組み込み、同一産業内の企業でも生産性には差異があることを考慮した分析とすることがトレンドとなっている。これは、貿易自由化により競争圧力が高まると、同一産業内でも生産性の低い企業は産業から退出することなどにより、各産業の平均的生産性が高まるという効果である。このような内生的生産性変化は、FTAの経済や環境への効果に影響を及ぼす。しかしながら、FTAの気候変動影響評価を行った既存研究ではこの企業の異質性を考慮した分析は未だほとんど行われていない状況にある。そこで本研究では企業の異質性を考慮したCGEモデル分析により、我が国が関係するFTAの気候変動影響評価を行い、FTAの交渉および環境対策の立案に資する情報を提供することを目指した。本研究では、FTAの影響分析において国際的に広く用いられているGTAPの標準モデルの構造を変更し、貿易自由化による内生的な産業生産性の変化を組み込んだ。具体的には、FTAによる貿易自由化によって貿易総額をGDPで割ったものとして計測される「貿易開放度」が増加すると、競争環境の変化によって各産業内における企業の参入・退出が起こり、結果として産業の平均的生産性が変化するとの関係式を新たにモデルに組み込んだ。これにより、貿易開放度が高まると、競争が促進され結果として生産性が向上することを考慮したうえで、FTAによる温室効果ガス排出量への影響を分析できるフレームワークを構築した。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
北海道地域観光学会誌
巻: 10 ページ: 26-35
Journal of International Trade, Logistics and Law
巻: 8 ページ: 28-36