研究課題/領域番号 |
21K14929
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
菊島 良介 東京農業大学, 国際食料情報学部, 准教授 (70757129)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 卸売市場 / JA / 農産物直売所 / フードシステム / バッファリング機能 |
研究実績の概要 |
本課題は高度に発達しながらも脆弱性を抱えるフードシステムにおける農産物直売所・JAのバッファリング機能を検証することを目的としている。ここでのバッファリング機能とは、調達エリアの近さによる食料供給面での「頑強性」、時間とともに変化する消費者ニーズに対応しうる「柔軟性」である。農産物直売所やJAが持ち合わせるこれらの機能が消費者の食生活や生産者の出荷行動に与える影響評価を行い、フードシステムが抱える脆弱性に対する有効性を検証する。具体的には(1)食料品の購入に不便や苦労を感じる消費者(食料品アクセス問題)への食料供給機能(頑健性)(2)コロナ禍における農産物の需給調整機能(柔軟性)である。これらの成果により、今回のコロナ禍のような不測事態に備えたリスク管理や新しい生活様式におけるフードシステムについて新たな知見を得ることを目指す。 (2)を中心に研究を行うとともに、(1)のデータセットの構築や分析方法の検討を行った。(2)については、栃木県や福島県のJAや茨城県の道の駅で実態調査を行った。 また、卸売市場のようなグローバルなフードシステムと農産物直売所のようなローカルなフードシステムとの相互関係にも着目する研究の必要性を感じて、若手研究者を研究協力の体制を構築した。ローカルに生産される作物がローカルな需要を満たすのに十分でなく、余剰地域から不足地域への食料の輸送が必須であることも指摘され、これを補完するのがグローバルなフードシステムであり、これらの関係を明らかにすることを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の完成度を大きく左右する(1)のデータセットや分析方法について、新たな研究協力者の協力を得て慎重に検討したため時間を要したが、当初の予定より複雑な分析方法を検討することになった。(2)については、当初の予定よりも少なくなってしまったが、栃木県や福島県のJAや茨城県の道の駅で実態調査を行うことができ、分析を深める素地が整いつつある。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度末頃からコロナが収束する方向に向かう中、グローバルなフードシステムとローカルなフードシステムとの相互関係にも着目する研究の必要性を感じ、新たな研究の方向性を探った。具体的には、グローバルなフードシステムが特定の地域内の不作による供給不足や農産物価格変動の衝撃を周辺地域に分散・緩和させ、食料流通の安定性に貢献した可能性がある。突発的な値崩れや高騰に対するバッファリング機能をどの程度発揮したか明らかにする研究も予定している。研究協力者のサポートも得ながら実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由としてはデータの購入に際して慎重に調査地を検討している点、および調査の実施が当初の予定より少なくなり、調査に係る費用があまり計上されなかったことが挙げられる。 翌年度分の使用計画としては、(1)調査に係る費用(旅費それに伴うレンタカー借料、調査経費:インタビューやアンケート協力への謝金)(2)論文投稿に係る費用(英文校閲料、論文投稿・掲載料)(3)学会参加・発表に係る費用(旅費、参加費、)(4)図書の購入(5)迅速に膨大なデータの分析実施を可能とするためのパソコンの購入を用途として計画している。
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