研究実績の概要 |
初年度となる2021年度は主に①分析のための環境構築,②自由貿易協定締結に伴う「貿易の利益」推計のための機械学習(ML)用,および経済理論をベースとした計量経済学的方法による主要パラメータ推定用のデータの整備,および③国際経済学における実証研究を中心とした先行研究のレビューを行った. ①について,本研究では各国の農産物・食品に関するバイラテラルな時系列貿易データなどの大規模なデータに対し効果的に機械学習(ML)の方法を適用するため.そのために十分なスペックのワークステーションを設置し,WSL(Windows Subsystem for Linux)・UbuntuにおけるPythonの利用準備を進めた.②について,メインのMLをベースとした分析の比較対象となる,経済理論に基づく貿易モデルを援用したシミュレーション分析で採用される主要パラメータ(特に国産品・輸入品間の代替の弾力性)の推定を進めるため,輸入農産物の財カテゴリに対応する国産農産物(牛肉,豚肉,鶏肉,バター,チーズ,脱脂粉乳など)の需給表を作成した.③について,国際経済学分野におけるMLの適用に関する諸研究(Gopinath et al., 2020; Breinlich et al., 2021; Nummelin & Hanninen, 2016; Yildirim et al., 2014など)や貿易の利益に関する諸研究(Alessandria et al., 2021; Krolikowskia & McCallum, 2021; Giri et al.; 2021など),およびトレード・コストに関する諸研究(Anderson et al., 2018; Chaney, 2018)など最新のものを整理したが,「貿易の利益」の推計への直接的なMLの適用は確認されなかった.
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