研究課題/領域番号 |
21K14935
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
眞鍋 邦大 龍谷大学, 経営学部, 准教授 (90845033)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 労働力不足 / 労働力支援 / JAグループ / プラットフォーム / 多様な主体 / パートナー企業 |
研究実績の概要 |
本研究は,繁忙期の一時的な労働力不足の緩和・解消が産地の喫緊の課題となる中,JAグループが都市住民を含めた多様な主体の労働参加を促進する「労働力支援プラットフォーム」としての役割を期待できるのではないかという仮説のもと,その機能を発揮するためには,現状どのような課題や障壁が存在するのかを明らかにするとともに,プラットフォーム構築の要点を解明することを目的としている。 当該年度は,特にパートナー企業との連携による農作業受委託形式での労働力支援の展開に焦点を絞り,調査対象の一つである「JA全農兵庫と各農協および各関係主体」に対して,継続的な聞き取り調査と現場視察を実施した。調査からは,連携のフェーズごとに対処すべき課題が異なる点が明らかになる一方で,生産者からはJAグループが労働力支援に積極的に取り組む意義について,高く評価する声が確認できた。 なお,パートナー企業との連携における具体的な課題としては,①委託元の農家とパートナー企業との円滑なコミュニケーションの方法,②作業現場で各作業員に指導する作業リーダーの配置とその育成,③パートナー企業にとって事業として成立するだけの農作業委託量の確保とそれを担う作業員の確保,④作業員の募集(応募者の面接など)を行うとともに,現場への送り出し拠点となる事務所の確保,⑤他の労働力確保の手段と比較し,費用対効果で農家にメリットのある適切な料金設定の検討,の5点が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の調査対象としては「JA全農おおいたと各農協各および関係主体(以下,JA大分グループ)」と,「JA全農兵庫と各農協および各関係主体(以下,JA兵庫グループ)」を設定しており,研究の前半(2021年度)は,仮説検証型の研究としてJA大分グループを対象に調査を進め,後半(2022~23年度)は,研究の核としてJA兵庫グループを対象に仮設探索型の研究を行うことを想定していた。 初年度(2021年度),新型コロナ感染症拡大による緊急事態宣言や蔓延防止措置などの行動制限によって,遠方への調査が困難であったため,研究計画を変更し,県内移動のみで実施が可能なJA兵庫グループへの調査を優先した。その結果,労働力需要の多様化の実態を明らかにすることができたが,JA大分グループへの調査は予備調査のみに留まった。当該年度(2022年度)前半は,引き続き一定の行動制限が継続する中,JA兵庫グループへの調査を優先した結果,パートナー企業との連携の実態を明らかにすることができた。 しかしながら,JAグループが産地と労働力の適切なマッチングを行うために,農業に関心のある層を対象に,労働参加にはどのような条件やインセンティブが必要かを明らかにするためのアンケート調査を実施する計画であったが,調査票の作成に想定以上の時間を要し,実施に至らなかった。また,JA大分グループに対しては年間を通じてメールを中心とした情報収集を継続したが,調整不足により現地調査を実施することができなかった。これらが調査遅延の理由である。
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今後の研究の推進方策 |
予備調査に留まっているJA大分グループを対象とした調査を進め,労働力支援におけるプラットフォームの有効性を改めて検証するとともに,直近2年間の展開と課題を踏まえて,労働力支援プラットフォーム構築の要点を明らかにする。 また,2022年度に実施に至らなかったアンケート調査を実施し,残された研究課題である「どのような条件やインセンティブを整えれば,それぞれの主体の関与が可能となるのか?」を明らかにする。これらの調査研究を踏まえて,最終年度の最大の研究課題である「産地と関心層の適切なマッチングのためには,JAグループがプラットフォームとしてどのような機能の追加や仕組みの改変を行う必要があるのか」の解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究期間前半に予定していたJA大分グループへの調査が予備調査に留まっているため,まず次年度にはJA大分グループを対象とした現地調査を実施する。また,2022年度に実施予定であったアンケート調査を実施し,残されている研究課題の解明を目指す。その上で,最終年度として当該研究の最終成果を学会にて報告し,広く公開する。
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