研究課題/領域番号 |
21K14940
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
小島 悠揮 岐阜大学, 工学部, 准教授 (70767475)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 土壌熱輸送特性 / 植物根 |
研究実績の概要 |
本研究は,地表面近傍土壌の熱輸送量評価において,これまで着目されてこなかった植物根の生長が土壌の熱輸送特性に与える影響を解明することを目的としている.2021年度は異なる3種類の植物(ダイズ,ギニアグラス・西洋芝)を2種類の土壌(岐阜大学実験圃場土,黒ボク土)に栽培し,土壌の熱輸送特性(熱伝導率と体積比熱)の変化をサーモTDRと呼ばれるセンサによって評価した.その結果,以下のことが明らかになった.
①岐阜大学実験圃場土の熱伝導率や体積熱容量は,植物根の生長に伴って増加する傾向が見られた一方,有機物に富む火山灰性土の黒ボク土では大きな変化が見られなかった.岐阜大学実験圃場土では植物根が間隙を埋め,土粒子同士の接続性を高めたために熱輸送特性が増加したと考えられる.黒ボク土では植物根の生長に伴い,間隙率が増加(乾燥密度が低下)する現象が見られ,植物根によって土壌構造が変化している可能性が示された.このことから,間隙率の増加による熱輸送特性の低下と植物根の存在による熱輸送特性の増加が相殺された結果,黒ボク土では熱輸送特性に変化が生じなかったと推察される. ②ひげ根を持つギニアグラス,西洋芝を栽培した土壌において,顕著な熱輸送特性の変化が見られた一方,主根・側根を持つダイズでは大きな変化が見られなかった.ある程度径の大きい根が広範囲に分布するひげ根の方が,より多くの間隙と土粒子間の接続に影響を及ぼすためと推察される.このことにより土壌全体の熱輸送により大きな影響を与えたと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,土壌ポットに植物を栽培し,その際の土壌熱輸送特性測定を実施した.それにより植物と土壌の種類によって熱輸送特性の変化傾向が異なるという重要な知見が得られた.簡易的ではあるものの,植物根の生長を考慮した熱輸送特性モデルの開発にも着手しているため,研究はおおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
植物根が熱輸送特性に与える影響をより詳細に解明するため,植物生育土壌のCTスキャン画像の取得と画像解析を進める予定である.これにより植物根が土壌構造をどのように変化させるのか定量的な解釈が可能になると考えられる.
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次年度使用額が生じた理由 |
野外試験に必要な測定機器等の購入を予定していたが,CTスキャンと画像解析による植物根混入土壌の熱輸送特性評価をより優先すべき研究項目として取り入れたため,その経費として次年度に消化することとした.本年度予定していた国際学会発表を次年度以降に見送ったため,次年度以降に消化する.
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