研究課題/領域番号 |
21K14947
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
野下 浩司 九州大学, 理学研究院, 助教 (10758494)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 形態測定学 / 植物フェノタイピング / 機械学習 / 画像解析 |
研究実績の概要 |
本年度は,植物形態のフェノーム解析に向けて,特に,個別要素の形状や形態のフェノタイピング技術の効率化とそれらが組合わさった複雑な表現型を定量化するためのモデルや手法開発に取り組んだ. 具体的には,3次元空間中における葉の位置,サイズ,輪郭形状を2次元的な投影や計測を経ずに取得する手法の開発を進めた.葉脈の簡易計測システムの開発とネットワークベース特徴量による定量化を進めた.これまでに収集をおこなってきた植物多視点画像データセットやそのアノテーションデータを活用し,深層学習に基づくインスタンスセグメンテーションによる小葉の認識,SfM及びMVSによる3次元再構築,点群密度に基づく3次元インスタンスセグメンテーション,輪郭形状推定を実装し,仮想データによる提案手法の検証をおこなった.これにより同一シーン内に複数の葉が存在しているケースであっても,それらを個別の要素として認識し,さらにその輪郭形状をデジタイジングすることができることを示した.従来の2次元的な投影や計測に基づく定量化や,3次元であっても輪郭の認識が難しいケースでは得ることができない3次元輪郭形状を直接的に推定することが可能になる.また,葉脈の簡易的な計測方法として透過光を利用した非破壊的な手法を開発し,複雑な繰り返し構造である葉脈をグラフとしてデジタイジングするための画像解析手法を提案した.さらに,得られたグラフからネットワーク特徴量による定量化をおこない,数種の構造的な差異を見出すことができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
個別要素の形状とその集合としての多階層構造のみならず,個別要素である器官内に存在する階層構造などの当初想定したものとは異なる階層的な形態情報を定量的に捉える手法を新規に提案することができた.
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り,個別要素の定量化手法の効率化と階層性をつなぐフェノタイピングを実現するための数理モデルの開発を進める.一方で,開発しているフェノタイピング理論や技術は,当初の予定よりも広範な対象に適用できる可能性が出てきた.そのため,対象となる構造やスケールをより拡張できるか,理論や技術を一般化できるかの検証を実施する.
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