本年度は,植物形態のフェノーム解析に向けて,3次元空間中における葉の輪郭形状を2次元的-3次元の情報を統合することで推定する手法の開発に取り組み,その適用可能性の検証をおこなった.深層学習に基づくインスタンスセグメンテーションによる2次元画像中の小葉の認識,SfM及びMVSによるカラメラパラメータの推定と3次元再構築,3次元インスタンスセグメンテーションと2次元画像中のインスタンスの対応付け, 輪郭形状推定からなる三次元輪郭形状解析について,複数の植物多視点画像データセットとそのアノテーションデータ,シミュレーションデータをもちいて,推定精度と適用可能な対象を探索した.例えば,切れ込みをもつ葉についてはその切れ込みを精度良く再構築できるが,鋸歯のような空間的な変動が大きな形態的な特徴については再構築が難しいことが明らかになった.また,イネやコムギのような細長い葉についてはその先端部分の再構築精度が低下することがわかった.シンプルな形状の葉については同一シーンに複数枚存在する場合でも葉の輪郭を再構築することができ,葉に観察される穴などの構造についても同時に再構築することができる.また,多視点画像の枚数が一定以上,位置に関するカメラパラメータの推定精度がい一定以上であれば,葉の再構築精度が確保されることを示した.従来の2次元的な投影や計測に基づく定量化や,3次元であっても輪郭の認識が難しいケースでは得ることができない3次元輪郭形状を直接的に推定することが可能となる手法として今後活用を進める.
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