高血糖動物であるニワトリは、正常なヒトと比較して2-3倍高い血糖値を示す。グルコース代謝の中間体として存在するジカルボニル化合物は、糖尿病患者ではさまざまな悪影響を引き起こすことが近年明らかになってきているが、ニワトリは高血糖という特徴を持ちながら、ジカルボニル化合物の生体内の濃度といった基礎的知見すら明らかにされていない。本研究は、高血糖動物であるニワトリにおいてジカルボニル化合物が果たす役割を解明することを目的とし、ジカルボニル化合物が、ニワトリ生体内に①どれだけ存在し、②どのような生理的意義を担っているのかを明らかにすることを試みた。前年度に①をほとんど完了したため、本年度は、主に②の課題を中心に取り組んだ。具体的には、ジカルボニル化合物がニワトリ骨格筋細胞の酸化ストレスに与える影響と、ニワトリの耐糖能に対する影響を調査した。まず、前年度から取り組んでいた酸化ストレス亢進作用について、実験条件を変えながら検討した。その結果、哺乳類で報告されているような、ジカルボニル化合物による酸化ストレス促進効果を観察することはできなかった。また、ジカルボニル化合物がインスリン抵抗性を惹起するという報告があることから、ニワトリへの経口糖負荷試験を行い、耐糖能に対するジカルボニル化合物の影響を調べた。その結果、明らかな耐糖能異常は示されず、むしろグルコースの経口投与による血糖値上昇の抑制作用が確認された。以上のことから、ジカルボニル化合物に対するニワトリへの影響は哺乳類と異なる部分があると思われる。
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