研究課題/領域番号 |
21K14968
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
青木 玲二 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門, 上級研究員 (00391384)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | IL4i1 / 腸管上皮 / 腸管免疫 / 芳香族炭化水素受容体 / インドール-3-ピルビン酸 |
研究実績の概要 |
Interleukin 4-induced gane-1 (IL4I1)はL-アミノ酸をα-ケト酸に変換する酵素であり、免疫の抑制に関わっていることが報告されている。IL4I1はトリプトファンを代謝してインドール-3-ピルビン酸を産生するが、インドール-3-ピルビン酸やその派生物は芳香族炭化水素受容体(AhR)を活性化することがわかっている。一方で、AhRは腸管免疫や腸管上皮の発達において重要な役割をはたしていることが知られている。そこで、本研究ではIL4I1ノックアウトマウスを用い、IL4I1が腸管の発達に寄与しているかどうかを明らかにすることを目指す。R4年度は前年度に引き続き、導入したIL4I1ノックアウトマウスの遺伝的背景を変えるため近交系との戻し交配を実施し、現在8世代目が生まれている。また、R3年度にインドール-3-ピルビン酸が腸管オルガノイドの分化を促進する可能性を見出したことから、今年度はIL4I1自体が腸管オルガノイドの分化に与える影響を検討した。IL4I1を添加して腸管オルガノイドを培養したところ、インドール-3-ピルビン酸の添加時と同様に、腸管上皮幹細胞マーカーの遺伝子発現が抑制されることがわかった。一方で、興味深いことにIL4I1の添加は分泌系上皮細胞の分化で必要となる遺伝子の一つの発現を抑制することも見出された。この作用はインドール-3-ピルビン酸とは異なったことから、IL4I1はインドール-3-ピルビン酸の産生とは別の機構により、腸管上皮細胞の分化に影響を与える可能性があることもわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度にIL4i1ノックアウトマウスを導入したが、新型コロナの影響により当初予定していた輸送会社が利用できないなどの問題が発生し、計画に遅延が生じた。また、令和4年度にも新型コロナの影響により実験を実施できない期間があったことから計画に遅延が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
IL4I1ノックアウトマウスを用いた解析を実施するため、引き続き、IL4I1ノックアウトマウスのコンジェニック化を進める。系統樹立後に、野生型マウスとIL4I1ノックアウトマウスの腸管の免疫関連遺伝子の発現解析や腸管粘膜固有層リンパのフローサイトメトリー解析から、自然リンパ球の発達状況やサイトカインの発現を比較する。また、腸管上皮細胞マーカーの遺伝子発現や腸管組織切片の解析により、腸管上皮の分化状況を明らかにする。さらに、各マウスの腸管バリア機能を比較するため、IL4I1欠損マウスと野生型マウスのマウスにデキストラン硫酸ナトリウムを摂取させ、腸管に誘導される炎症状態を比較する。 また引き続き、IL4I1が腸管オルガノイドに与える影響の解析を行う。IL4I1が腸管オルガノイドの分化に影響を与えることが示唆されたことから、この作用にAhRが関与しているかどうかを明らかにするため、AhRアンタゴニストを用いた実験を実施する。さらに、野生型マウスとIL4I1欠損マウス由来の免疫細胞を調製し、これらにおけるIL4I1の発現を確認後、免疫細胞を腸管オルガノイド培養に加え、細胞の分化に与える影響を解析するほか、IL4I1が免疫細胞の分化に与える影響についても解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
R3年度に新型コロナウィルスの影響でIL4I1ノックアウトマウスの導入計画に遅延が生じたほか、R4年度に新型コロナウィルスの影響により実験を実施できない期間があったため、その分計画に遅延が生じており、次年度使用額が生じている。 次年度は引き続きIL4I1ノックアウトマウスのコンジェニック化を進めるため、それに関わる人件費に使用するほか、腸管オルガノイドや免疫細胞の解析で必要となる消耗品類の購入に使用する計画である。
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