研究課題/領域番号 |
21K14974
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
金城 綾二 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 特任助教 (00827941)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ネコ / iPS細胞 / bFGF / LIF / 培養条件 |
研究実績の概要 |
申請者はこれまでの研究において、培養液に成長因子として塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を添加し、ネコiPS様細胞を作製した。本細胞は未分化マーカー(OCT, NANOGなど)を発現し、継続的な培養を行うことが可能であった。さらにin vitroで様々な細胞に分化することが可能であり、培地条件を変更することで血液系細胞や神経系細胞を得ることに成功していた。一方、成長因子として白血病抑制因子(LIF)を使用したネコiPS様細胞の作製が報告されている。当該研究で作製されたネコiPS様細胞は、宿主ゲノムに導入されたウイルス由来遺伝子が継続的に発現し、さらにin vitroでの分化能が十分でないなどの問題点が指摘されていた。そこで、添加する成長因子がネコiPS様細胞に及ぼす影響について検討を行った。申請者らが作製したネコiPS様細胞の成長因子をLIFに変更したところ、ネコiPS様細胞は徐々に分化し、維持培養は困難であった。本研究により、細胞株によって必要とする成長因子が異なることを明らかにした。また、必要な成長因子と細胞株の特性に関連性があると考えられ、高い分化能と増殖能を有するネコiPS細胞が作製可能な培養条件を検討する必要があると考えられた。 ヒトやイヌにおけるiPS細胞の培養条件を参考とし、ネコiPS細胞の作製時に様々な培地や添加因子を組み合わせ、ネコiPS細胞の作製を試みた。本手法で作製したネコiPS細胞は未分化マーカー(OCT, NANOGなど)を発現し、継続的な培養を行うことが可能であった。さらにin vitroで様々な細胞に分化することが可能であった。これまでに作製したネコiPS様細胞と比較して高い増殖能を有しており、多数の細胞が必要となる分化研究への応用に適していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、本年度に作製したネコiPS細胞はゲノム遺伝子の改変を伴わない手法により作製されている。また、本細胞は未分化マーカーの発現や分化能などiPS細胞としての要件を満たしていることに加え、高い増殖能を有しており、分化研究や将来的な臨床応用に適していると考える。 一方、現在の培養条件は他の細胞種との共培養を行っている。共培養系は維持培養に必要な様々な因子を得やすいという利点がある一方、細胞の分化誘導時に有害な因子が含まれてしまうといった欠点を有する。そのため、他の細胞種との共培養に依存しない、培養条件の検討・確立が課題として残っている。
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今後の研究の推進方策 |
ネコiPS細胞の膵島への分化誘導・膵島の機能解析 これまでに作製したネコiPS細胞は高い増殖能と分化能を有しており、様々な細胞種への分化誘導研究に適した特性を有している。本細胞の維持培養においては、細胞接着の基質や培養液中への成長因子の分泌を目的とし、他の細胞種との共培養を実施している。共培養系は維持培養に必要な様々な因子を得やすいという利点がある一方、細胞の分化誘導時に有害な因子が含まれてしまうといった欠点を有する。 そこで、ネコiPS細胞を作製する際に、他の細胞種との共培養を必要としない培養条件の確立を行う。本培養条件下で作製したネコiPS細胞を使用し、膵島への分化誘導について検討を行う。初期内胚葉の分化には、複数の成長因子を培養液に添加し、ネコiPS細胞を効率的に機能性の膵島に分化誘導できる各成長因子の濃度を明らかにする。膵島への分化は膵島の分化マーカー(PDX1, PAX6など)の発現、機能性タンパク質(insulin, glucagonなど)の合成などに基づいて評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまで他の動物種のiPS細胞では、様々な培養液や添加因子について、その組み合わせや濃度などの検討が行われてきた。そのため、ネコiPS細胞でも同様に様々な培養条件について検討を行う必要があると予測し、これらの培養液や添加因子の購入計画を立案した。 一方、所属研究室ではネコiPS細胞の作製に先行してイヌiPS細胞の作製の研究を行っている。これらにイヌiPS細胞の培養条件を参考としたところ、早期に良好な結果を得ることができ、培養条件の検討に必要な物品代を抑えることができた。 以後の使用については研究計画の一部を変更し、高い増殖能と分化能を有するネコiPS細胞を作製するのみならず、これらの特性を維持したまま、分化研究への活用を容易な培養条件の検討に活用する。
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