研究課題
これまでの研究で、VapN非産生株のVapN遺伝子ORF内にvapNアンチセンスRNA(ASvapN)が検出され、ASvapNによるVapN発現の負の制御機構の存在が疑われた。また、ASvapNのプロモーター配列(PASvapN)を用いたDNAプルダウンにより、VapN非産生株の高pH培養時に結合量が増加するGntR family FadR様転写制御因子(GntRと呼称)を同定した。本年度は、①GntR欠損VapN非産生株並びに補完株を利用したマクロファージ内増殖性(病原性)の評価と②PASvapN配列内におけるGntRの結合部位の特定を試みた。①上記欠損株は培養マクロファージ内で増殖が可能であったが、野生株(非産生株)及び補完株では明確な増殖が認められなかった。この結果は前年度までの野生株・欠損株・補完株におけるVapN発現の変化並びにPASvapN プロモーター活性の変化に対応していた。②ゲルシフトアッセイによりASvapN の転写開始点から上流157 bp内に結合部位が存在することが示された。FadRはTKGT/ACMAボックスを持つ回文配列が結合部位として知られ、上記配列内に1カ所存在する。フットプリントによる実験的な結合塩基の特定には至らなかったが、GntRがPASvapN配列に結合し、ASvapN発現の活性化因子として機能することでVapN発現を抑制することが強く示唆された。これまでに作出した抗VapNモノクローナル抗体を実際の反芻動物症例の免疫染色へ応用した。2022年に国内で発生した2つのウシ症例の膿瘍形成臓器(肺、リンパ節など)において陽性反応が認められた。さらに、1998年に米国にて発生したウシ症例の右第5肋骨においても陽性反応が認められた。このことから、本抗体はretrospectiveな診断にも応用できる有用な病理診断ツールとなり得ることが示された。
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Microbiology Spectrum
巻: 11 ページ: e0072923
10.1128/spectrum.00729-23