今年度は、CADにおいて皮膚細菌叢の乱れが起こる原因について追及した。 まず健常ビーグル犬(6頭)の頸部皮膚に毎日PBSを噴霧し疎水性ラップで保護したところ、ブドウ球菌の過剰増殖と皮膚炎が起こることを発見した。1㎝2大の皮膚上の細菌を、ストリークカップ法にて採取しマンニット食塩培地に播種したところ、発育するコロニー数がPBS噴霧によって増加した。また経表皮水分蒸散量が増加した。更に紅斑が確認できたとともに、真皮浅層にCD4 T細胞の浸潤を確認することが出来た。上記から、アトピー性皮膚炎においても高い湿潤した皮膚環境がブドウ球菌の過剰増殖を引き起こす可能性を疑った。そこでブドウ球菌の過剰増殖が自然に起こりアトピー性皮膚炎様症状を引き起こすADAM17 Sox9 KOマウス(2週齢)にワセリンを毎日塗布したところ、ブドウ球菌の過剰増殖と皮膚症状が非塗布群よりも顕著に促進した。 この「高い湿潤した皮膚環境がブドウ球菌の過剰増殖と皮膚炎を引き起こす」事象がCADにおいて重要一因であると考え、さらなる詳細な解析のために、Balb/cマウスを用いて湿潤皮膚に伴う皮膚炎モデルを作成できないか検討を行った。Balb/cマウスの耳介にPBSを塗布し疎水性ラップで保護することを、1日おきに7日間実施した。皮膚表面上から検出されるマンニット食塩寒天培地発育菌数は4日目まで増加したが、その後徐々に減少した。真皮に浸潤している炎症細胞数や経表皮水分蒸散量も同様の挙動を示した。この開発したマウスモデルを用いて、今後菌叢の変化を引き起こしている要因を探求する予定である。 しかしながら申請者は、世界的に有名な痒みの研究者Brian Kimのところで数年間研究力の強化を目的に研究留学する機会を得た。そのため、帰国時の状況を見て本プロジェクトの方向性を再調整する必要があると思われる。
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