研究課題/領域番号 |
21K14979
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
宮前 二朗 岡山理科大学, 獣医学部, 助教 (40846143)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | イヌ / 主要組織適合性複合体(MHC) / DLA / ペプチドワクチン / がん免疫療法 |
研究実績の概要 |
MHC結合ペプチドの同定はがん免疫研究において極めて重要であるが、イヌMHC(DLA)分子に結合するペプチドを解析した報告は非常に少ない。本研究では、まず、イヌ全体で高頻度のDLAクラスⅠ遺伝子を対象としてDLA結合ペプチドの同定を行う。さらに、得られた情報を元に、DLA分子に提示されうるがん抗原ペプチドを予測し、予測されたがんペプチドと人口抗原提示細胞を用いてがん特異的T細胞を誘導することで、がんワクチン開発に有用ながんペプチドを同定することを目的とする。 既に樹立していたDLA高発現株において、当初使用していたPAタグによるDLA分子の精製が十分に機能しなかった。そこで、FLAGタグが結合したDLA分子(計7種類)を安定発現するイヌメラノーマ細胞株を新たに樹立した。DLA-88*508:01を発現するイヌメラノーマ細胞株においてDLA結合ペプチドの解析を実施したところ、計142個のペプチドが得られた。これらのうち、127個のペプチドは8~14-merであり、9-merのペプチドが52個で最多であったことから、DLAクラスI分子に結合するペプチドを単離・濃縮し、解析できたと考えられた。9-merのペプチドの中には、ヒトにおいてメラノーマの転移や腫瘍形成との関連が報告されているTRF2に由来するペプチドも確認された。 人口抗原提示細胞の作製は、抗原提示細胞の機能に重要な細胞接着分子(CD54およびCD58)や共刺激分子の細胞表面での発現をフローサイトメーターで解析し、イヌのリンパ腫由来の細胞株を人口抗原提示細胞として用いることとした。また、この細胞株に発現が認められなかった共刺激分子(CD86、CD70およびCD137L)の発現ベクターの構築も完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定したタグによるDLA分子の精製が十分に機能せず、新たなタグによるDLA高発現株の作製を行ったため、研究に遅れが生じた。現在は、新たなタグを結合したDLA高発現株の樹立に成功し、十分にDLA分子の精製も行えているため、当初の予定通りDLA結合ペプチドを同定できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に予定していたDLA結合ペプチドの同定に遅れが生じているため、2022年度は主に下記について実施する。 ・ DLAクラスI分子結合ペプチドを、新たに樹立したDLA高発現株(7種類)で同定する。各DLA分子で2回以上反復実験を行い、さらに、免疫沈降の際にFLAG抗体やビーズ担体に非特異的に結合するタンパク質のデータベース(CRAPome)を用いてペプチドを精査することにより、得られたDLA結合ペプチド配列の精度を向上させる。 ・ DLA-88*508:01を発現する人口抗原提示細胞を樹立する。DLA-88*508:01に結合するペプチド配列については既にいくつか報告があり、がんペプチドの予測が可能である。我々の解析から実際に得られたTRF2のペプチドや、他の腫瘍関連抗原(テロメラーゼ、gp100、チロシナーゼ)において予測されるがペプチドを人口合成する。DLA-88*508:01を保有するビーグル犬(既にDLAタイピング済み)から単離したT細胞、人口抗原提示細胞および合成したがんペプチドを共培養し、がん抗原特異的なT細胞の誘導を試みる。CD107bの発現、IFNγ産生および細胞増殖を測定することで、T細胞の活性化を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定したPAタグによるDLA分子の精製が十分に機能せず、質量分析の解析数が減ったため、次年度使用額が生じた。これらは次年度の質量分析の解析費用として使用する予定である。
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