研究実績の概要 |
MHC結合ペプチドの同定はがん免疫研究において極めて重要であるが、イヌMHC(DLA)分子に結合するペプチドを解析した報告は非常に少ない。本研究では、イヌで高頻度のDLAクラスⅠ遺伝子を対象としてDLA結合ペプチドの同定を行う。さらに、得られた情報を基に、DLA分子に提示されうるペプチドの予測システムを構築することを目的とする。 イヌで高頻度の各DLA分子を高発現する細胞株を樹立した。これらの株を用いてDLA結合ペプチドの解析を行い、これまでにDLA-88*004:02, DLA-88*501:01およびDLA-88*508:01の3分子において、9-11merのDLA結合ペプチドをそれぞれ154個、788個および898個同定できた。これらのうち、9merのペプチドについて比較すると、いずれの分子においても、2残基目は疎水性ペプチドが80%以上を占めていた。また、DLA-88*501:01においては、9残基目も90%以上が疎水性ペプチドであった。3残基目については、DLA-88*501:01およびDLA-88*508:01は40-50%が疎水性ペプチドである一方で、DLA-88*004:02については、酸性ペプチドであるアスパラギン酸が50%以上を占めており、DLA分子により、結合ペプチドの性状に違いが確認された。 これらのペプチド配列およびこれまでに報告されているヒトMHC(HLA)結合ペプチドのデータを用いて、MHC結合ペプチドの予測アルゴリズムを実装したツールであるACMEをトレーニングし、研究代表者独自のDLA結合ペプチド予測システムを構築した。構築した予測システムの精度を確認するため、既に他の研究者らによってDLA-88*508:01とのaffinityが確認されているイヌジステンパーウイルス(CDV)由来の抗原ペプチドを用いて結合予測を行った。ACMEで予測されたbinding scoreと、実際のDLA分子とペプチド間のaffinityには相関が確認され、実際にaffinityの高いペプチドは、我々の予測システムにおいても高いbinding scoreとなることが確認された(相関係数:r=0.635、p<0.01)。
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