研究課題
節足動物媒介性の人獣共通感染症ウイルスであるオルソブニヤウイルスの一種オロプーシュウイルス(OROV) は中南米でデング熱に次いで頻発する新興感染症であるが、病原性発現機構や作用機序に関する研究は十分ではない。一方申請者はOROVが既存の感染機構では報告されていない「核蛋白質(N)が感染細胞の核に集まる」様子を観察した。感染細胞で産生される主要な蛋白質であり、ウイルス感染に必要不可欠であるNの細胞内挙動を明らかにすることは、未だ病原性メカニズムが明らかではないOROVの新たな感染機構の解明につながると考えた。そこで本研究では「OROVのNが感染細胞の核に局在する」という新たな現象の解明を目的とした。本年度は感染細胞を用いて経時的なNの局在の変動について詳細な解析を行った。感染細胞の核・細胞質を分画し、それぞれの画分におけるNの存在量を経時的に測定した結果、各種感染細胞においてNの存在量および集積時間に差があることが明らかとなった。またOROV以外のオルソブニヤウイルスとしてOROVと同じ血清群のサシュペリウイルス、異なる血清群のブニヤムウェラウイルスを用いて免疫染色により細胞内のNの局在を観察したところ、これらのウイルスにおいてもNが核に局在することを確認した。ただ一方でブニヤムウェラウイルスの核小体シグナル予測のスコアはOROVと比較して低く、また感染時にNが核に局在する時間が異なる結果を得た。現在この差異についての解析を行っている。
3: やや遅れている
リバースジェネティクス法を行う上で必要な申請の承認に時間を要したため、N変異ウイルスの作製に着手することが出来なかった。一方感染細胞内のNの挙動について、他のオルソブニヤウイルスを含めて詳細な解析を行う事が出来た。
リバースジェネティクス法を行う上で必要な申請が承認されたため、今後Nの細胞内局在に関わると予測される部位の変異ウイルスを作製し、OROVの核局在に重要な部位の特定に取り組む。また他のオルソブニヤウイルスのNとの比較を行う事で、更なる詳細な性状解析を進める。
リバースジェネティクス法を行う上で必要な申請の承認に時間を要したため、N変異ウイルスの作製に着手することが出来なかった。今年度この助成金を使用して承認実験を行う。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Antiviral Res.
巻: 213 ページ: 105582
10.1016/j.antiviral.2023.105582.