研究課題/領域番号 |
21K14986
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
土岐 朋義 北里大学, 獣医学部, 助教 (40792396)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 猫伝染性腹膜炎 / FIP / TNF-alpha |
研究実績の概要 |
ネコ伝染性腹膜炎(FIP)はFIPウイルス(FIPV)を病原体とするネコ科動物の致死性ウイルス感染症であり有効な治療方法は確立されていない。FIPの病態形成にはFIPVに感染した単球およびマクロファージから過剰に産生されるtumor necrosis factor-alpha (TNF-alpha)が深く関与している。抗ネコTNF-alpha抗体はFIPの治療薬の候補として応用が期待される。しかし、抗ネコTNF-alpha抗体を用いた治療法を確立するには抗体を安定して供給するための発現系が構築されていない。本研究では抗ネコTNF-alpha抗体の発現系の改良と、治療法が確立されるまでの応急策としてヒト型抗TNF-alpha製剤をFIPの治療に応用するドラッグリポジショニングの有用性の検証を行うことを目標とする。 令和3年度はネコTNF-alphaを中和するヒト型抗TNF-alpha製剤の選抜を行った。ヒト型抗TNF-alpha製剤の選抜においては、アダリムマブがネコTNF-alphaに対する中和活性を示すことを既に報告している。今回、アダリムマブ以外のヒト型抗TNF-alpha製剤のネコTNF-alphaに対する中和活性を調べたところ、アダリムマブに加えてセルトリズマブペゴルもネコTNF-alphaに対する中和活性を有する可能性が示唆された。一方、インフリキシマブはネコTNF-alphaに対して中和活性を示さない可能性が示唆された。選抜されたヒト型抗TNF-alpha製剤についてはネコ由来初代培養細胞を用いてTNF-alphaにより誘導される好中球生存率の増加、ウイルスレセプターの発現増加およびウイルス感受性の増加についても調べる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ネコTNF-alphaを中和するヒト型抗TNF-alpha製剤の選抜については、予定通りネコTNF-alphaを中和するヒト型抗TNF-alpha製剤を同定することに成功した。また、令和3年度および4年度に実施を予定していたネコ化抗ネコTNF-alpha抗体の高発現系の構築はジヒドロ葉酸レダクターゼ(dhfr)遺伝子欠失のCHO細胞(CHO dhfr-細胞)を用いた発現系を選定し、現在発現ベクターを構築している。これらを踏まえると、おおむね予定通りの進捗状況と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
選抜されたヒト型抗TNF-alpha製剤についてはネコ由来初代培養細胞を用いてTNF-alphaにより誘導される病態悪化(好中球生存率の増加・ウイルスレセプターの発現増加・ウイルス感受性の増加)を抑制できるか否かを調べると共に、ネコに投与して薬物動態パラメータを検討する予定である。 また、発現ベクターを構築中のネコ化抗ネコTNF-alpha抗体の発現系については構築されたベクターをCHO細胞にトランスフェクションし、その発現量を測定すると共に、高収量の培養方法および条件を検討する。
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