最終年度である令和4年度は抗ネコTNF-alpha抗体の発現系の改良を行った。既報の抗ネコTNF-alpha抗体はH鎖発現ベクターおよびL鎖発現ベクターをco-transfectionし、2種類の抗生物質を用いて安定発現細胞を選抜している。遺伝子導入効率および選抜効率を増加させるため、L鎖発現カセットをH鎖発現ベクターに挿入したH鎖およびL鎖発現ベクターを再構築した。また、この再構築した発現ベクターを用いて抗ネコTNF-alpha抗体を安定発現する細胞の樹立を再度試みたところ、過去に樹立した安定発現細胞よりも高発現する細胞を2クローン樹立することに成功した。また、この新たに樹立した細胞の培養上清から精製した抗ネコTNF-alpha抗体は過去に樹立したものよりも中和活性が高い可能性が示唆された。既報の発現ベクターの改良に加えて、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(dhfr)遺伝子欠失CHO細胞(CHO dhfr-細胞)を用いた発現系に対応した発現ベクターを構築した。現在、この発現ベクターを用いた安定発現細胞を選抜中である。 本課題では抗ネコTNF-alpha抗体の発現系の改良と、治療法が確立されるまでの応急策としてヒト型抗TNF-alpha製剤をFIPの治療に応用するドラッグリポジショニングの有用性の検証を行うことを目標として研究を行った。研究期間を通じてネコTNF-alphaに中和活性を有するヒト型抗TNF-alpha製剤を選抜するとともに抗ネコTNF-alpha抗体の発現系を改良することに成功した。この知見は猫伝染性腹膜炎の治療薬開発に有用であると考えられる。
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