研究課題/領域番号 |
21K14987
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
菅野 智裕 北里大学, 獣医学部, 助教 (20834469)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 精子 / 牛 / 人工授精 |
研究実績の概要 |
ホルスタイン種および黒毛和種種雄牛各12頭分の凍結精液を用い、精子運動性および細胞機能評価を実施した。まず、品種間での精子性状の比較を行ったところ、黒毛和種精液ではホルスタイン種の精液よりも、融解直後の時点で細胞膜正常、先体正常で高いミトコンドリア活性を有する精子の割合が高かった(64.5±6.5 vs 61.3±5.9%; P<0.05)。また、精子サブポピュレーション構成を比較したところ、ホルスタイン種では頭部を大きく振りながら高速で運動する精子が多い一方、黒毛和種では運動速度はホルスタイン種に劣るが、頭部を細かく頻繁に振動しながら直進する精子が高率に存在していた。さらに、ホルスタイン種雌牛に人工授精を行った場合の人工授精成績を両品種間で比較したところ、ホルスタイン種(36.6%)と比較して黒毛和種(41.0%)でより高い分娩率を示した(P<0.05)。これらのことから、品種ごとに精子性状が異なっていること、これに起因する品種間での人工授精受胎率の際が存在することが示唆され、人工授精受胎率予測モデルを確立するうえで、品種ごとの精子性状の特性、標準的な人工授精受胎率を踏まえる必要があると考えられた。この品種間での精子性状の差異および人工授精受胎率の比較結果については、学会発表を行っている(菅野ら,第164回日本獣医学会)。さらに、品種ごとに個体間での精子運動性サブポピュレーション構成や精子細胞機能の差異と人工授精受胎率との関係について、現在解析を進め、人工授精受胎率予測モデルの確立に向けた検証を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の流行により、研究代表者の出張制限および大学における研究活動の制限のみならず、研究材料やデータの提供を受ける予定であった家畜人工授精所や人工授精師の業務、訪問制限が生じたことから、人工授精受胎率データおよび実験材料を受領する時期の遅延が生じた。このため本研究課題で予定していた実験を予定通り進めることができず、当初令和3年度中に実施、完了する予定であった、受精が成立するまでの一連の精子機能を評価する系および受胎率予測モデルの確立が未了である。このため、本研究は全体計画から見て、進捗状況がやや遅れていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、令和3年度に完了することができなかった精子機能評価系の確立のために必要な実験、特に当初予定していた体外受精に関する実験を実施して受胎率予測モデルを完成させる。これと並行して、予定通り新規種雄牛候補の後代検定用精液を用いた実験を行う。既に20頭のホルスタイン種雄牛由来の後代検定用精液を人工授精所より受領済みであり、精子運動性サブポピュレーション解析にはすでに着手している。その他の各種実験も、当初の予定通り遂行予定である。令和4年度に実施すべき実験は当初予定よりも数多く残されているものの、材料入手や研究協力者の確保など、研究を遂行する体制は整っており、研究の推進計画を大きく変更する必要はないと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の流行に伴う出張制限および学会のオンライン開催により、当初予定していた出張の回数が減少した。また、研究の進捗にやや遅れたことで令和3年度中に得られた成果を論文として投稿できなかった。これにより出張経費として計上していた旅費と、英文構成等、論文投稿にかかる経費として計上していたその他の経費が余ってしまった。代わりに当初は令和4年度に購入予定であった物品(研究に必要な消耗品)を前倒しして購入したが、当初予定の金額として使い切ることができず、21,081円が残った。この余剰分を令和4年度に、研究成果公表のための論文投稿にかかる費用の一部として、令和4年度分交付金と合わせて使用する。
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