研究課題/領域番号 |
21K14990
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
三浦 亮太朗 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 講師 (60782133)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 牛 / 子宮 / 単核球 / 炎症 / 修復 / 免疫 |
研究実績の概要 |
分娩後の子宮内膜の炎症の有無を評価するにあたり、ブラシ状の器具で子宮内膜の表層細胞を採取し、顕微鏡下で全細胞数に対する多形核白血球(PMN)の割合を算出し評価するサイトブラシという方法が注目さている。サイトブラシを用いて子宮内膜炎の診断を行い、その後の繁殖成績を評価した報告は多数存在する。しかしながら、子宮内膜炎の診断を実施する時期や子宮内膜炎のPMN割合の診断基準は文献により大きく異なり、統一した診断基準が確立していない。この背景には、分娩後の子宮修復の過程における子宮内膜の細胞動態が十分に理解されていないことが考えられる。そこで申請者は、分娩後の2~8週に渡り継続的に子宮内膜の表層細胞をサイトブラシで採取するとともに、20mlのHBSSを用いて子宮内還流を行い回収液中のサンプルに含まれる細胞の評価を行った。その結果、サイトブラシで得られたサンプルを評価したところ、PMN比は週の経過とともに低下することが示されたが、PMN割合が低下する週に単核球(MNC)割合が上昇することが明らかになった。また、MNCが増加する週の子宮還流液中のサンプルをフローサイトメーターにかけたところ、CD4+Tリンパ球が出現していることが示された。これらの結果から、分娩後の子宮修復過程でPMNの低下、つまり子宮内膜の炎症の収束時期にMNCが増加すること、またMNCはCD4+Tリンパ球である可能性が高く、子宮修復の最終段階で増加することが推測された。このことは、子宮修復においてCD4+Tリンパ球が重要な役割を果たしていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、分娩後の牛のサンプリングは計画通り進んでいること。また採取したサンプルの解析により、サイトブラシによる顕微鏡下での子宮内膜での細胞動態に、特徴的なMNCの出現が確認されることを見出し、さらにそのMNCがCD4+Tリンパ球であることを確認できていることから、計画はおおむね順調に進行していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、供試牛の頭数を増やし、MNCの増加の時期やそのパターンが個体ごとに異なるのか、または普遍的な動きをするのかを確認するとともに、MNCの増加が子宮内膜に対してどのような作用(炎症誘起、抗炎症、免疫寛容など)をもたらしているのか、還流液の上清中のサイトカイン測定、還流液中の細胞サンプルのリアルタイムPCRを行いmRNA発現を解析することで明らかにすることを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
採材に使用する器具を購入予定であったが、2021年度は器具が十分に足りたため、次年度以降の試験のために購入するために、繰越することにした。
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