研究実績の概要 |
CpGオリゴDNA(CpG ODN)は、感染症やがんの予防・治療におけるアジュバント(免疫増強因子)としての利用が期待される核酸素材である。本研究の目的は、申請者がこれまでに開発した安定かつ効率的にCpG ODNを腸管に送達するDNAナノカプセル(DNanocap)と腸管粘膜免疫応答を増強するClass A CpG ODNを組み合わせ、感染症に対する経口粘膜アジュバントを創製することである。 初年度は、卵白アルブミン(OVA)経口感作モデルを用いて、Class A CpG ODNを包摂したDNanocap(CpG-Acap)のアジュバント活性とその機構の解析を実施した。マウスに1mg OVAと5mgのCpG-Acapを週1回、計3回経口投与し、経口投与の0, 7, 14, 21, 28および35日目に回収した糞便中のOVA特異的IgAおよび分泌型IgA量をELISA法を用いて解析した。また、経口投与の35日目にマウスを解剖し、血清中のOVA特異的IgG量をELISA法で測定した。陰性対照として生理食塩水(PBS)あるいは同量のカプセル単独(cap)を与えたマウスと比較して、CpG-Acapを与えたマウスにおける糞便OVA特異的IgA量および血清中のOVA特異的IgG量の増加は認められず、抗原特異的免疫応答に対するアジュバント活性はなかった。一方で、CpG-Acapを与えたマウスにおける糞便中の分泌型IgA量は、PBSおよびcapを与えたマウスと比較して経口投与の14日目に有意に増加し、解剖日(投与35日目)まで効果が持続するという想定外の結果を確認した。
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