研究課題
網膜の視細胞の特に外節の基部では多数の細胞外小胞が観察されることが古くから知られている一方で、これらの細胞外小胞の役割については多くは明らかになっていない。本研究では、網膜、特に視細胞における細胞外小胞の役割とそれらの分子基盤の解明を目的とする。視細胞特異的テトラスパニンであるペリフェリン-2は、光受容の場である外節の形成・維持と視細胞の生存に不可欠な膜タンパク質である。ペリフェリン2は後期エンドソームやリソソームに局在し、その外節への輸送にエンドソーム経路が関わることが明らかになっている。一方、プログラニュリン(PGRN)はリソソーム機能に関わる分泌タンパク質であり、そのホモ接合変異は神経セロイドリポフスチン症を引き起こし、PGRN欠損マウスが網膜変性を引き起こすことが報告されている。最終年度は、ペリフェリン2や代表的なテトラスパニンであるCD63の細胞内局在におけるPGRNの役割について検証した。PGRNに対するshRNA 発現プラスミドを用い661W細胞においてPGRNの発現を抑制したところ、同時に発現させたペリフェリン2やCD63の酸性オルガネラへの局在が低下した。マウス網膜に遺伝子導入し培養細胞の実験同様にPGRNの発現を抑制した場合では、錐体細胞において外節が菲薄化し、内節が膨化する像が観察された。また、対照群では錐体細胞の外節に局在していたCD63は、PGRN発現抑制により内節で小胞様の分布を示し、ペリフェリン2においても同様の局在異常を示した。以上の結果から、視細胞においてPGRNはテトラスパニンの輸送を介して外節の形態や機能を制御しており、網膜の恒常性において重要な役割を担っていることが示唆された。
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