研究課題/領域番号 |
21K15001
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研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
梶 典幸 麻布大学, 獣医学部, 講師 (20779318)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | カハール間質細胞 / 腸内細菌 / 消化管 |
研究実績の概要 |
本研究は腸内細菌と消化管運動ペースメーカー細胞(ICC)のクロストークを明らかにすることを目的としている。 本年度はまず抗生物質により腸内細菌を除去したマウスにおけるICCの増殖を検討した。その結果、抗生物質を投与したマウスの小腸遠位部において増殖マーカーを発現するICCの数が有意に減少していた。また、ICCの代わりに平滑筋細胞と思われる細長い核を保つ細胞の割合が増加していた。また、RNAseq解析において増加が認められていた平滑筋マーカーであるACTG2 mRNAが実際に増加していることをリアルタイムPCRにて確認した。これらの結果から腸内細菌の除去によりICCの増殖が抑制され、代わりに平滑筋細胞の増殖が促進している可能性が示唆された。次に、実際に腸内細菌の除去により血中セロトニン濃度が減少しており、セロトニンの補充により増加していることを確認した。 本年度は上記の実験と同時に、ICCが腸内細菌にどのような影響を及ぼすか明らかにするための実験を実施した。まず、ICCの機能を抑制するためにペースメーカー機能の発揮に必須のチャネルであるANO1の阻害薬が実際に消化管運動に影響を与えるか検討した。その結果、ANO1阻害薬Ani9は胃排泄能や大腸輸送能に大きな影響を及ぼさなかった。一方、小腸においてANO1阻害薬により、内容物を塊にして輸送する能力が低下する可能性が示唆された。今後、Ani9を投与したマウスにおける小腸と大腸の腸内細菌の変化を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腸内細菌がICCに及ぼす影響については現象とメカニズムの一端を明らかにできている。ICCが腸内細菌に及ぼす影響についても、条件検討が済んでいるため、研究全体としておおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
腸内細菌がICCに及ぼす影響については無菌マウスを用いて同様の現象が生じているか確認する。また、ICCの減少に関わるセロトニン受容体を特定する。 ICCが腸内細菌に及ぼす影響については、ANO1阻害による小腸運動の詳細な変化をビデオ解析により明らかにするとともに、ICC機能を阻害したマウス(ANO1阻害剤投与)と正常マウスや神経機能を抑制したマウスの腸内細菌叢を比較することで、ICCが生み出す消化管運動が腸内細菌にどのような影響を与えているか明確にする。ICC機能阻害により腸内細菌叢が変化していた場合は、これを無菌マウスに投与し生着させることで、消化管運動やICCの数に影響があるか明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
腸内細菌叢解析のために必要なサンプルを本年度中に集めることができなかったため、解析のための費用が残っている。腸内細菌叢の解析については次年度に実施することで消費する。
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