研究課題/領域番号 |
21K15002
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
西田 翔一 金沢医科大学, 医学部, 助教 (50747251)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 細胞外マトリクス / 腸管神経移植 / 腸管神経系 |
研究実績の概要 |
腸管の運動,分泌,吸収の調節を自律的に調節する腸管神経叢は胎生期に神経堤由来細胞(ENCCs)が口側から腸管全長にわたり遊走して形成され、その発生期における異常はHirschsprung病に代表される腸管神経症を引き起こす。ENCCの遊走や増殖,分化には周囲の細胞外マトリックス(ECM),サイトカインや成長因子といった環境因子が深くかかわる。申請者らはNeurosphere spreading assayを用い,ENCC遊走促進因子としてフィブロネクチン(FN)を、抑制因子としIII型とVI型コラーゲンを同定した。さらにマウスのex vivo腸管神経移植実験において腸管表面にENCCを移植したとき、移植ENCCsは腸管表面に広く遊走するが,腸管をcollagenase I処理およびFN添加してECM環境を変化させると、移植ENCCsは、腸管内腔方向に向かって浸潤することを見出した。これらの結果は、結腸表面の細胞外マトリックスによって提供される環境が、移植されたENCCの移動の方向に影響を与えることを示唆している。これらの発見は、ドナー幹細胞移植のためのレシピエント結腸の状態を改善する方法を提供し、それは細胞治療戦略の前進に貢献する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腸管神経移植を促進する細胞外マトリクスの同定と、促進するメカニズムの一端を明らかにすることができたため、研究は順調に進んでいると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
申請書に記した通り、今後は移植腸管神経の分化、増殖に与える細胞外マトリクスの影響を以下の通りに調べていく。 受容体Xの下流で神経分化に関係する転写因子としてSOX10、ZEB2が報告されている(Watanabe Y et al. Gastroenterology 2017)。VI型コラーゲン上で培養したENCCsでもSOX10、ZEB2の遺伝子発現の亢進が観察された(申請者未発表データ)が、受容体XのようなGDNF依存性は観察されなかった。さらに神経分化の調節に関係することが報告されている転写因子群の発現制御を調べたところ転写因子Yが受容体Xと同様の調節を受けていることが分かった。そこで、実際のENCCsの中でVI型コラーゲン+RETシグナル→転写因子Y→受容体X→SOX10, ZEB2→神経分化のシグナル伝達経路が存在するかCRISPR-Cas9の系を使い転写因子Y、他をノックダウンすることでVI型コラーゲン依存的に増加した受容体Xの発現が抑制されるか検証する。併せて実験3.1で観察されるENCCsの表現型が抑制されるか調査し、VI型コラーゲンが受容体Xを介してENCCsの神経分化、増殖の調節を行っているか明らかにする。遺伝子Yが関与していなかった場合、マイクロアレイ解析でRETリガンドとECMの組み合わせで変動する転写因子を網羅的に探索し、同様の検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響下で、プラスチック製消耗品の納期が未定のものが多く、期間内に納品されなかったため、使用額に変更が生じた。本年度購入できなかった物品は次年度購入する予定である。
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