本研究ではリボソームと翻訳因子の結合・解離サイクルを駆動するリボソームストークをハブとして形成される翻訳因子プールについて、その構成因子を明らかにする。また各因子とストークの結合・解離動態を明らかにする。2023年度は、近位依存ビオチン標識法によって同定された、リボソームストーク近傍に存在しうるタンパク質について、分子間相互作用解析を行うための準備として、大腸菌またはヒト培養細胞を用いたタンパク質発現・精製系の確立と条件検討を行った。 前年度にP0-uID発現細胞から同定された120種類の候補タンパク質の中から、 (1) すでにリボソームストークと結合することが既知であるもの、(2) リボソームストークと結合することが少数のグループから報告されているが他のグループから再現の報告がないもの、(3) これまでの経験からリボソームストークと結合する可能性が高いと予想されるもの、(4) これまで何の報告もない完全に新規のものでLC-MS/MSで高い確度で同定されたものを含む21種類のタンパク質をさらなる解析対象とした。これらのタンパク質がリボソームストークと直接結合するかどうかの検証を行うため、スモールスケールでのタンパク質の発現・精製系の確立を試みたところ、20種類中13種類は大腸菌発現系を、7種類はヒト培養細胞系を用いて可溶性タンパク質として発現させることができることを確認した。しかしながら、残り1種類のタンパク質についてはどちらの系を用いても発現を確認することができなかった。現在、これらのタンパク質の精製方法についての条件検討を行っており、完了次第、マイクロスケール熱泳動によるリボソームストークとの分子間相互作用解析を実施予定である。
|